春闘で約30年ぶりに賃上げ率が5%を超えたとされる中、1年前と比べ、賃金の増加幅が物価上昇幅を上回ったと感じている人は約6%にとどまっていることが、連合総合生活開発研究所(市川正樹所長)のアンケート調査で判明した。春闘で大きな賃上げがあったとされても、生活が良くなったとの実感までには至っていないことが浮き彫りになった。
連合総研は、労働組合の全国組織・連合系のシンクタンクで、雇用や労働実態の調査、研究を行っている。今回の調査は年2回実施しているアンケート調査「勤労者短観」。今年4月、首都圏、関西圏を中心にウェブで実施し、20~60代の正社員、非正規社員の4190人の回答をまとめた。
首都圏、関西圏では、1年前に比べ「賃金の増加幅は物価上昇と比べ大きいか小さいか」との問いに対し「賃金の増加幅の方が大きい」と答えたのは6・6%で、「同程度」が14・9%、「物価上昇の方が大きい」が60%、「分からない」が18・6%だった。2023年10月の調査に比べ、「賃金増加幅が大きい」が減り、「物価上昇が大きい」が増えていた。雇用形態別では、非正規社員で「賃金増加幅が大きい」と答えたのは5%で、正社員の7・3%を下回った。年代別では、20代9・9%、30代8・3%が「賃金増加幅が大きい」としたのに対し、50、60代は3・9%にとどまり、物価上昇が賃金増を上回るとの回答が7割を超えた。
連合が3日に公表した24年春闘の賃上げ状況の最終集計では、加重平均での賃金引き上げ率は5・10%(1万5281円)となり、33年ぶりに5%を超えた。連合幹部は調査結果に「4月の調査なので、まだ賃上げの効果が出る前だと思う。いずれ生活改善への効果が出てくるのでは」と期待を込めた。一方、非正規社員の厳しい状況については「連合の春闘集計では非正規の賃上げが正社員を超える結果も出ているが、それは一部にとどまり広がっていないのだと思う。最低賃金の議論で改めて賃金の底上げを訴える必要がある」と話した。【東海林智】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。