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 日本の金融市場でいま「最高値」の言葉が踊りまくっている。東京株式市場の日経平均株価は連日のように史上最高値を更新。東証株価指数・TOPIXでも2900を上回り「バブル期を超えた」と大騒ぎだ。新NISAが始まって以来、投資信託にも多くの資金が流れ込み、人気のインデックスファンド「オールカントリー」では、前年の約5.7倍にまで増加した。そんな中、政府は子どもたちへの“金融教育”を推進、2022年から高校で義務化された。ところが、現場から聞こえてくるのは投資、投資の言葉ばかりという指摘も。『ABEMA Prime』に出演した社会的金融教育家の田内学氏は「マネーゲームばかりでは新しい物が生まれず全員で沈んでいく」と警鐘を鳴らす。

【映像】2014〜2024年、NISAの口座数

■日本の金融教育は2020年度からスタート

 日本における金融教育は2020年度に小学校を皮切りに、2021年度に中学校、2022年度の高校と順を追って始まった。高校では2022年4月から新しい指導要領に基づいた「高校家庭科」の授業が始まり、その中で金融教育を受けることに。そして、今年に入り新NISAがスタート。日本全体で「投資」に関する意識が、一気に高まった。ただ、この高まりが本来あるべき「金融教育」からかけ離れていると語るのが田内氏だ。「社会の中で金融システムはどういうものかを知るべき。お金を融通することで、自分のやりたいことを叶えるとか。それをお金がない若い人、高校生に出す側、融通する側に回れというのはおかしい」と、投資をする側ばかりの教育になっていると苦言を呈した。

■金融教育で学ぶべき本質とは

 金融広報中央委員会が発表している「金融教育」とは、「お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会の在り方について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に判断し行動できる態度を養う」とされている。ところが田内氏が各地の学校を回って実感したのは、教育現場での内容が投資を中心とした資産形成の話ばかりになっているということだった。「とある新聞を見て本当に驚いた。ある首都圏の進学校の金融教育で『日本の明るい未来を作る方法』というところで『アメリカにドル投資しましょう』と書いてあった。お金を増やしたい気持ちはわかるが…」と憂いた。

■「投資で儲けることは公教育で教える話じゃない」

 金融=投資して儲ける、ではない。むしろ投資“される側”になり、新たなことを生み出すようになることもしっかり学んでほしいのが田内氏の思いだ。「そもそも金融というのはお金を“融通”することだ。お金を“融通”することによって、お金じゃないもの、例えば自分がやりたいことや、叶えたいことを実現する。お金がある人からない人に流れることによって、大学に行ったり、事業を始めたり、新しいことに挑戦する。金融というシステムを使うことで、やりたいことをできるようにしましょうというのが本来の金融教育だ。投資してお金を稼ぐのがダメと言っているのではなく、それは公教育で教える話じゃないでしょう、と。未来の若者に育ってほしいわけであって、金融商品の話を中心に教えてもらいたいわけじゃない」と、方向性について熱弁した。

■日本に必要なスタートアップ企業「マネーゲームだけでは全員沈む」

 日本でもスタートアップ企業は増えつつあるものの、まだ海外と比べてその勢いは弱い。国内に投資したくなるような企業がなければ、自然と投資家の目は海外に向き、さらに格差は広がってしまい、国内での競争力も失われるという悪循環が生まれていく。金融教育で海外に投資して儲けることを考えるより、むしろいかに日本で新たな事業を起こし、投資される側に回ることができるかを考える必要がある。田内氏は「やりたいことはお金を増やすことじゃなくて、その先にあるはず。投資は時間を味方につけてお金を増やすと言われるが、逆にお金を借りることでも時間を節約することができる。社会は利他のためじゃなくて、自分たちのためにある。金融投資ばかりしていたら絶対に新しいものは生まれないし、マネーゲームばかりでは全員が沈んでいく」と訴えていた。
(『ABEMA Prime』より)

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