新しいデザインの紙幣が3日に発行される。1万円札の肖像に描かれる「日本の資本主義の父」と称される実業家の渋沢栄一。渋沢が設立などに関わった企業は多く、帝国データバンクによると、現存する「渋沢関連企業」は167社に上る。このうち2023年時点の売上高(単体)が1000億円以上の企業は85社で、石油元売り大手のENEOS(エネオス)がトップとなっている。
帝国データによると、渋沢が設立や運営、出資者として関わった企業は約500社に上る。現存する167社のうち上場企業は98社ある。売上高トップのエネオスは、渋沢が発起人となった北越石油(1896年設立)をルーツに持つ。
3メガバンクも、そろって上位10位に入った。特にみずほ銀行は、渋沢が大蔵省を辞した後に初めて設立した株式会社で、自身が頭取も務めた日本初の近代的銀行、第一国立銀行を源流の一つとする。
渋沢関連企業は、明治期の日本経済を支えた業種が多数を占めており、製造業が49社と約3割を占める。続いて金融・保険が35社、鉄道事業を中心とした運輸・通信が22社、電気・ガス事業者が14社で、インフラ関係の業種も多い。帝国データは「渋沢が活躍した明治時代は日本が資本主義経済の礎を固める時期で、当時求められていた事業を次々に興していたことが、現存する企業からも読み取れる」と分析している。
業歴100年以上の「老舗企業」も多く、110社を数える。業歴トップは1673年創業の三越伊勢丹。同社は三越の創業者、三井高利(1622~94年)が創業した呉服屋「越後屋」がルーツだ。渋沢は、1904年に百貨店になった三越呉服店に講演や指導などで関わった。
現在も多くの渋沢関連企業が残っていることについて、帝国データの担当者は「渋沢が本気で『公』の心を持ち、形になるまで関わっていたことの表れだ」と述べている。【福富智】
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