いよぎんホールディングス(松山市)傘下のシンクタンク「いよぎん地域経済研究センター(IRC)」が愛媛県内の企業と県内在住の会社員などを対象に行ったアンケート調査で、男性の育児休業の取得推進施策について従業員と企業の間にずれが生じている可能性が浮かび上がった。
企業向けの調査は県内793社を対象に2月に郵送で行い、279社(有効回答率35・2%)から回答を得た。会社員や公務員など県内在住者向けは3月にオンラインで実施し、20~50代の500人(男女半数ずつ)が回答した。
「男性が育休を取りやすくする、または取得推進の取り組み」について複数選択で尋ねたところ、「育休制度の周知徹底」が従業員側50・8%、企業側45・6%でいずれも最多で一致した。しかし、従業員側で36・8%と次に多かった「経営トップからのメッセージ」は、企業側では10・6%だった。また、従業員側の34・2%が「育休取得者向けの手当の充実や経済的サポート」を挙げたのに対し、企業側は6・9%にとどまった。
1日に記者会見したIRCの矢野一成社長は「社員の希望と企業の考えや取り組みにミスマッチが生じている」と分析する。
愛媛県の調査によると、県内企業の男性の育休取得率は2023年度は28・5%で、19年度の4・3%から6倍超と急増。ただ、23年に閣議決定された「こども未来戦略」では、男性の育休取得率の目標を「25年までに50%」としており、更なる推進が必要だ。
アンケート調査で取得や推進の不安や課題(複数選択)を双方に聞いたところ、従業員側の男性の回答は、「仕事を引き継げる人がいないまたは少ない」が42・8%で最多だった。次いで「取りやすい雰囲気ではない(上司・同僚の理解が進まない)」が39・6%だった。企業側は、「人員不足(代替要員の確保が難しい)」が74・5%で最も多く、「仕事をカバーする社員の負担増」が68・3%で続いた。
一方、男性の育休推進などで期待できるメリット(複数選択)を企業に聞くと、「企業イメージの向上」が43・9%で最多だった。IRCの聞き取りなどに対して、企業からは「働き方改革や男性育休取得の推進を始めてから(採用の)応募者数は着実に増えている」「業務の属人化の見直し・改善につながった」などと効果を実感する声が上がっている。
今回調査を行ったIRCの孫璇(そんせん)研究員は「仕事の引き継ぎなど従業員の不安を取り除くために制度の周知や代替要員の確保など、企業側からの積極的な説明が必要」と語った。【山中宏之】
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