パチンコ店には逆風か――。7月3日の新紙幣発行を前に、機器の更新作業が必要なパチンコ業界が対応に追われている。パチンコ機1台ごとの対応が必要なケースが多く、新紙幣への対応が業界の重荷となり、廃業や整理が進む可能性もある。
1台ごとに機器の更新必要
パチンコチェーン大手「ダイナム」(東京都荒川区)は4月以降、各台に備え付けられた機器の交換作業を急いでいる。主に対応が必要なのは、現金を投入してパチンコ玉やメダルと交換する「サンド」と呼ばれる機器で、パチンコやパチスロ機の脇に1台ずつ備え付けられている。
サンド自体の交換には1台当たり約20万円かかり、紙幣を識別するセンサー部品を交換するだけでも、2万~3万円はかかる。業界内では、1店舗当たり1000万~1500万円の支出が見込まれているという。
ダイナムは沖縄県を除く全国で397店舗を展開し、パチンコ・パチスロ機は計約19万5000台に上る。多額の費用負担に加え改修作業も膨大で「部品は確保できているが、改修業者の人手には限界があって(更新作業は)難しい」(広報担当者)という。
ダイナムの新紙幣対応は、台数ベースだと6月末時点で82%、11月末時点で94%程度になる予定。未対応の台の近くには、新紙幣が使えるICカードの券売機を置くなど対策を講じる。同社広報担当者は「できるだけ設備投資を抑えられるように計画を進めてきた。お客様に迷惑がかからないようにしたい」と話す。
パチンコホールの運営実態を調べた帝国データバンクによると、2023年の事業者数は統廃合などが進み、前年比11・4%減の1336社だった。売り上げ全体はコロナ禍からの客足の回復もあって1・9%減で踏みとどまり、倒産件数も前年の34件から24件に減少した。
しかし、帝国データの担当者は「新紙幣の発行でサンド購入などを迫られ、多額の設備投資が不可欠」と話しており、廃業を決めた事業者も複数出てきているという。「資金繰りに余裕のある事業者は少ない」として、24年は廃業がさらに増えて淘汰(とうた)が進む可能性がある。【安藤龍朗、竹地広憲】
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