ポテンシャルは大きいが扱いにくいZ世代(写真はイメージです) Ground Picture-Shutterstock.
1990年代後半以降に生まれた若者たちは世界的にZ世代と呼ばれ、入社してくる若手のかなりの割合を占めるようになった。アメリカの経営者の多くは、そんな彼らをビジネスの足を引っ張る危険な存在と見ているようだ。
電子商取引サイトのパブリックスクエアと求職サイトのレッドバルーンが発表した「自由経済インデックス」の最新版によれば、スタートアップ企業を対象にした調査のなかで経営者の68%は、Z世代は従業員の中で「最も頼りにならない世代」だと回答した。また71%はZ世代のことを、仕事が原因で精神面の不調を起こしやすいと考えていた。
Z世代は「妄想の塊で常識が全く欠けており、論理的思考もしくは基本的な分析スキルもゼロ」との声も聞かれたという。
Z世代に対する批判的な見方はそれだけではない。「企業文化によく適応できる」と評価する回答は4%に満たず、「職場に分断と害悪をもたらす可能性が最も高い」という回答は62%に上った。
経営者の1人はZ世代について「単に毎日出勤しているだけで昇進を期待する」傾向があると辛辣にコメントした。
気に入らなければ会社を訴えることもある。経営者の57%が、Z世代は最も訴訟を起こすリスクが高いと答えた。
上の世代の轍は踏まない
もっとも、人事コンサルタントで人事関連情報サイトのDanFromHR.comを運営しているダン・スペースに言わせれば、この調査結果はあくまで小規模企業のオーナーから見た印象で、偏っている可能性があるという。職種や立場を問わず、Z世代は企業選びの際に高い報酬や優れた企業文化を求めがちだが、小規模企業にはそもそもハードルが高い、と彼は言う。
「Z世代は知識と自信にあふれ、現実主義的な世代だ。彼らは自分たちより上のミレニアル世代がどんな目に遭ってきたかよく見ている」とスペースは本誌に語った。
Z世代が職場が原因で心を病みやすいというのも当たらないとスペースは言う。メンタルヘルスの問題について話し合うことをいとわない傾向にあるのだと彼は言う。
もっと規模の大きな企業であれば、Z世代は技術力を生かすなどして優れた働きぶりを示す傾向があるとスペースは言う。だが、従業員はただ従順であればいいと考えるような経営者から見れば、Z世代の特徴は当然ながら「欠点」になる。
「Z世代はミレニアル世代と違って圧力によって変えることもできないし、X世代のように無気力でもない」とスペースは言う。
スペースは、長期的な業績向上を望むなら、目先の金儲けよりどうやってZ世代とうまくやっていくかを考えたほうがいいと経営者に説いている。
Z世代は権利意識が強くやっかいな世代だという見方は、彼らが就職した時代や、それまでに彼らがどんな経験をしてきたかに対する理解不足に端を発している場合もあると、人事コンサルタントのブライアン・ドリスコルは言う。
Z世代が社会人になったのは、IT技術が急速に進歩し社会的価値観が大きく変化した時期だった。また、新型コロナウイルスのパンデミックによるリモートワークは、新入社員のトレーニングの障害となった。
「Z世代を職場のやっかい者として扱うのは不当なだけでなく、職場は変化していくものだというもっと幅広い文脈を見落としている」とドリスコルは本誌に語った。「Z世代が仕事に、透明性や多様性の受け入れや目的意識を求めていることを(経営者は)しばしば曲解し、権利意識が強いとか信頼できないと思ってしまう」
給料より健康を選ぶ傾向も
ドリスコルに言わせれば、Z世代に「最も信頼できない」とか「最も心を病みそう」などとレッテルを貼るのは、経営者の側が従業員のニーズに応えることができていないことの裏返しだ。
「Z世代を問題児扱いするのではなく、上の世代なら縁のなかったような困難──不安定な経済もそうだし、ワークライフバランスや心の健康というものの概念を変えてしまった世界的なパンデミックもそうだ──に満ちた仕事環境の中を彼らは進んでいこうとしているのだと理解する事が大切だ」とドリスコルは言う。
ドリスコルによれば、Z世代の仕事に対する姿勢は上の世代とかなり異なるが、それにはもっともな理由があるという。
アプリを使った栄養管理サービスを提供しているライフサムがミレニアル世代とZ世代に対して行った調査によれば、71%は心身の健康に対するよりよい支援が受けられるなら明日にでも転職すると考えており、31%は今よりも幸せで健康的な労働環境と引き換えならば給与カットを受け入れる余地があると答えている。
「こうした変化を(職場に)取り入れれば、Z世代のもつ大きなポテンシャルを解き放つことができる」とドリスコルは言う。「雇用主は若い世代への文句ばかり言っていないで、Z世代は(自分たちの知らない)何かを理解しているかも知れないと考えるべきだ。どれだけ働いたかを自慢するだけが人生ではないのかも知れないと。もっといい働き方があるのかも知れない、もしかすると、こうした変化が経営者にとって生産性の向上につながるのかも知れないと考えるべきなのだ」
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