気温が上昇して「逃げ水」現象が見られる中、皇居周辺を歩く人たち=東京都千代田区で2023年7月16日午後0時半、藤井達也撮影

 リクルートの住まい調査機関「SUUMOリサーチセンター」は27日、2024年のトレンドワードを「断熱新時代」と発表した。猛暑が続くなか、電気料金の高騰も家計を圧迫し、住宅の断熱性能への関心が高まっているという。健康への影響を示す研究成果もあり、同センターは「断熱が新たな広がりを見せている」と分析している。

 気象庁のデータによると、東京都内では23年、猛暑日を記録した日数が年間22日で過去最多だった。日本では古来、多湿に対応するため風通しを重視する家屋が多かったが、近年は猛暑で夜も高温が続き、エアコンをつけたまま寝ることも珍しくない。冷暖房の利きを良くするため、断熱性や気密性の高い新築住宅が増えている一方、国土交通省の推計では、中古住宅の大半は断熱性能が低いという。

 冷暖房の使用が多くなると、困るのは電気代の負担だ。燃料価格の高騰などで電気料金が高止まりしていることに加え、政府が負担軽減策として実施していた補助制度が終わり、6月使用分(7月請求分)は大手電力10社のうち8社で過去最高になった。政府は8月使用分から3カ月限定で補助金を復活させるが、その先は再び負担感が重くなる可能性もある。

 一方、世界保健機関(WHO)が18年に発表したガイドラインは、寒さによる健康被害から居住者を守るための室内温度について「18度以上を強く勧告」している。これに対し、日本では北海道や新潟県などを除き、多くの地域で基準を満たしていないとの研究結果もあり、冬場の断熱効果も重要となっている。

 同センターの笠松美香研究員は「脱炭素社会の実現や光熱費の削減などで住宅の断熱は注目されていたが、より生活者の関心に近い健康に寄与することでさらに注目度が高まっている」と話す。【佐久間一輝】

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