山梨県市川三郷町で2023年夏に開催された県内最大級の花火大会「神明の花火」の経済波及効果(経済効果)が、24億4000万円に上ることが町の調査で判明した。今夏で36回目の開催になるが、経済効果を調べたのは初めて。町は周辺自治体に経済効果をPRし、8月の開催に向けて広報活動を強化していく考えだ。
神明の花火は、江戸時代に「日本三大花火」の一つと称されたが、開催が一時途絶えてしまい、1989年に復活した。今では約2万発の花火を打ち上げ、県内外から多くの観客が訪れる夏の風物詩になっている。
町は23年、民間シンクタンク「山梨総合研究所」(甲府市)に経済効果の調査を委託。有料観覧席の申込者1万2533人を対象にアンケートを実施し、1364人から有効回答を得た。
回答を分析した結果、1人当たりの観光消費額は2万6838円だった。内訳は交通費1万2604円▽宿泊費6447円▽飲食費3810円▽土産費3181円――など。消費額を基に、有料席の申込者数から算出した経済効果は3・6億円だった。
さらに、23年の花火大会の見物客数は、JR身延線や駐車場の利用者数などから約18万人。県外客や県内客の内訳を推計して消費額を割り出し、経済効果を算出すると約20億円に上った。大会実行委員会の支出による経済効果も加えると、全体の経済効果は計24億4000万円になった。
町の担当者は「全国的に有名な花火大会に比べればまだまだだが、思ったよりも多かった。さらなる発展に向けて、県内の市町村と一緒にPRできればいい」と語った。
財政難の町、売上増へ新たな観覧席販売
花火大会の開催費用を一部負担する市川三郷町は財政悪化で23年9月、「財政非常事態宣言」を出した。8月7日に開催される今年の花火大会では、魅力のある観覧席の新設や外国人観光客らの呼び込みで、収入増や地域活性化を目指す。
町によると、23年の前回大会は町が実行委員会に補助金400万円を支出。チケットの値上げや経費削減で約800万円の黒字になり、実行委が補助金を返還した上で残りの約400万円を町に寄付した。町の担当者は「利益が出たのは前回が初めてだった。利益がなければ今年の開催自体が危ぶまれたかもしれない」と明かした。
今年の大会は、これまでの最前列よりさらに花火に近い2種類のプレミアム席を新たに販売。このうち、3席限定で二人掛けのソファに座る「ダイナミックVIP席」(10万円)は80件以上の申し込みがあり、抽選になるほどの人気だった。
プレミアム席の購入者らには、町内で使える商品券を発行して周遊を促す。また、台湾の旅行会社に観覧席の販売を委託し、外国人観光客らの呼び込みも図っている。
座席数が多い階段席や椅子席、シート席などは順次販売する。問い合わせは実行委員会(055・272・1101)。【野田樹】
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