寄贈したホテルの物品の一部=札幌市中央区で2024年5月30日午前9時47分、今井美津子撮影
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 北海道内で唯一の回転レストランがあるセンチュリーロイヤルホテル(札幌市中央区)が31日、閉館し、半世紀の歴史に幕を下ろす。ホテルは30日、回転レストランで使用した食器、制服などを北海道博物館(厚別区)と生活文化の資料を収集する「まち文化研究所」に寄贈した。桶川昌幸総支配人は「ホテルと回転レストランがここにあったということを後世に伝えてもらえたらうれしい」と託した思いを明かした。【今井美津子】

 センチュリーロイヤルホテルが開業したのは1973(昭和48)年5月。高度成長期からバブル期にかけて全国的に建設が相次いだ回転レストランが最上階(23階)につくられ、話題を呼んだ。プロポーズの人気スポットとしても知られた。5月は、最後に思い出の場所で食事をしようと、多くの客が訪れ、連日、満席の状態だったという。

開業当時のセンチュリーロイヤルホテル(中央)。周囲にまだ高いビルがなかった=同ホテル提供
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 閉館にあわせて寄贈したのは、ロンドで使っていたワイングラスなどの食器類、かつての人気メニューで「スパセン」の愛称で親しまれた和風スパゲティ「スパゲッティ センチュリー風」の鉄板など。ほかにも、結婚披露宴の食事メニューや客室で使われたハンガーと多岐にわたる。金子厚総料理長が身に着けたコックコート、90年に現ホテル名に変更される前の「センチュリーローヤルホテル」の名前が入ったパンフレットもある。

 目録を受け取った北海道博物館の小川正人・学芸副館長は「冠婚葬祭などの節目に使われ、札幌の人たちにとって憧れと親しみのあるホテル。メニューや部屋のしつらえなどは時代を映すもので、記憶を未来につないでいく役割を果たしたい」と述べた。

 まち文化研究所の塚田敏信さんは「建物がなくなっても、資料でホテルとロンドをたどれるようにしたい」と話した。

寄贈式で目録を手渡したセンチュリーロイヤルホテルの桶川昌幸総支配人(中央)と北海道博物館の小川正人学芸副館長(左)、まち文化研究所の塚田敏信さん。手前は寄贈される資料の一部=札幌市中央区で2024年5月30日午前10時15分、今井美津子撮影
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 北海道博物館での展示は25年以降になる見通し。だが、検品や登録作業が終了すれば、事前予約して閲覧できる。まち文化研究所は今後、小樽市内に開設予定の私設博物館での公開を計画するという。

 ホテルは今回の2カ所のほか、札幌国際大にも結婚式や披露宴で使用したドレス4着を寄贈した。観光やブライダルを学ぶ学生たちの教材として生かされる。蝦名訓営業支配人は「地元に根ざして半世紀。『閉館してさみしいね』で終わるのでなく、役にたつことができれば」と話した。

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