高度な言語で対話ができる生成人工知能(AI)「チャットGPT」を開発した米新興企業オープンAIが15日、アジア初となる拠点を東京都内に開設したと発表した。米国以外では、英ロンドン、アイルランド・ダブリンに続く3拠点目で、生成AI分野で海外勢から遅れている日本企業の需要の取り込みを図る。
同日、記者会見したブラッド・ライトキャップ最高執行責任者(COO)は「日本はテクノロジーを効果的に採用してきており、次はAIだ。次の波で産業界、政府、社会が前進する。過渡期に貢献したい」と意気込んだ。
サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)はビデオメッセージを寄せ「東京の技術とイノベーションのリーダーシップで考えれば、私たちの拠点として自然な選択。日本を含む世界で存在感を高めることで、多様な視点を学ぶことができる。それは人類全体にAGI(汎用(はんよう)性のある人工知能)の利益を確実にするという私たちの使命にとって極めて重要だ」と述べた。
同社の筆頭株主の米マイクロソフトはAI事業強化のため、今後2年間で日本に29億ドル(約4400億円)を投資すると発表。同社の日本に対する投資額としては過去最大規模で、オープンAIとも協業するとみられる。
国内ではNECやNTT、ソフトバンクなどが生成AIの基盤となる日本語に特化した大規模言語モデルの開発でしのぎを削っている。生成AIに関わる日本企業との協業の可能性について、ライトキャップ氏は「もちろんイエス」と述べた。
生成AIを巡っては、政府が国内事業者向けの指針案をまとめているが、強制力はない。これに対し、欧米では厳しい規制が検討されており、欧州連合(EU)は3月、画像の作製に生成AIを利用した場合には、そのことを明示するよう企業に義務づけ、違反時は巨額の制裁金を科す世界初のAI規制法案を可決した。日本でも法制化の動きがあり、オープンAI幹部は「政府とも対話できることを楽しみにしている」と語った。
同社は2015年にアルトマン氏が米起業家のイーロン・マスク氏らと設立。22年11月に一般公開したチャットGPTは世界的に注目を集め、生成AIの火付け役となった。日本法人社長には、元アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)日本法人で社長を務めた長崎忠雄氏が就任した。【古屋敷尚子】
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