東京証券取引所=嶋野雅明撮影

 上場企業の2024年3月期決算発表が10日、ピークを迎えた。円安の影響で輸出関連企業の業績が押し上げられたほか、値上げの浸透も寄与し、最終(当期)利益の合計は3年連続で過去最高を更新する見通しとなった。

 SMBC日興証券の集計によると、9日までに決算発表を終えた東証株価指数(TOPIX)を構成する上場企業487社(集計対象の34・3%)の最終利益の合計は27兆6757億円で、前期比14・8%増。このうち179社は過去最高益となった。

 売上高の合計(会計基準が異なる金融業、卸売業を除く)は5・7%増の316兆9744億円、本業のもうけを示す営業利益の合計(同)は26・0%増の27兆5776億円だった。

 好業績の要因の一つは記録的なドル高・円安の進行だ。「製造業を中心にプラス効果が色濃く出た。仕入れコストの上昇も値上げなどでカバーできている企業が多い」と、SMBC日興証券の安田光チーフ株式ストラテジストは話す。

 最終利益を業種別でみると、輸出企業の多い製造業は23・9%増の15兆5140億円。トヨタ自動車が過去最高益を更新するなど、自動車関連を含む「輸送用機器」が87・4%増の6兆4134億円と躍進した。「食料品」は価格転嫁が進み、10・6%増の2231億円だった。

 非製造業は3・0%増の11兆1179億円。昨年はエネルギー価格の高騰で赤字だった電力会社などの「電気・ガス」が、2兆2660億円と大きく黒字に転じた。インバウンド(訪日客)需要の増加や新型コロナウイルス禍で落ち込んだ旅行客の回復を背景に、鉄道などの「陸運」は35・6%増、航空会社などの「空運」は約2倍と好調だった。

 一方、前年好調だった商社などの「卸売」は資源高が一服したことなどを理由に減益。「海運」はコロナ禍で生じたコンテナ船需要が落ち着いたことなどが影響し、約75%の減益となった。

 今後の企業業績の見通しについて、安田氏は「中東情勢の不透明さはリスク要因になるが、製造業の好転は今年度も続きそうだ。(物価上昇率を差し引いた)実質賃金がプラス転換すれば、国内景気の力強さが垣間見えてくると思う」と指摘した。【成澤隼人】

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