久光製薬「SAGAグローバルリサーチセンター」前でテープカットする関係者=鳥栖市姫方町で2024年4月13日午前10時21分、西脇真一撮影

 久光製薬(本社・佐賀県鳥栖市)が同市姫方町に建設していた新研究所「SAGAグローバルリサーチセンター」が完成し13日、オープニングセレモニーがあった。鎮痛消炎剤「サロンパス」などの貼り薬や新薬を研究・開発する世界的な拠点になる。

 同社には鳥栖市と茨城県つくば市に研究拠点があったが、これを同センターに集約。研究開発のスピードを向上させると同時に鳥栖工場など生産部門との連携も強化する。

 国道3号沿いのセンターは6階建てで、延べ床面積2万3290平方メートル。総工費は約120億円。研究者やスタッフら約150人が働く。国内外の大学・研究機関ともネットワークを構築し、センター内に共同実験スペースも設けた。

 セレモニーで中冨一栄社長は「研究機能を一つにし、製品サービス、技術開発のスピードを世界的に戦えるようにしようと建てた」と述べた。

販売開始90周年のサロンパス◇

 久光製薬は1847(弘化4)年に今の鳥栖市田代で製薬・売薬業者として創業した。同社の名前を世界に知らしめた「サロンパス」は、2024年に発売90周年を迎えた。

タイのコンビニエンスストアに併設された薬局で販売される貼り薬。中央の二つが「サロンパス」=バンコク中心部で2024年4月10日、石山絵歩撮影

 同社は膏薬(こうやく)を紙に塗って皮膚に貼る「朝日万金膏(まんきんこう)」を1907(明治40)年に発売。大正時代に「スペイン風邪」が流行した際、関節痛などに効くと評判になった。ただ、独特の臭いや貼った後に肌が黒く汚れるのが難点だった。

 そこで無色の「サリチル酸メチル」を使い、メントールの爽やかな香りのする「サロンパス」を34(昭和9)年に開発し、テスト販売を始めた。今は法律で規制されているが、当時は社員が銭湯を回って脱衣所で試供品を配りPRしたという。

 同社によると、現在「サロンパス」は世界30以上の国と地域で販売され、年間の売上高は約467億円。このうち米国や東南アジアなど海外が371億円と約8割を占める。

SAGAグローバルリサーチセンターの共同実験室=鳥栖市姫方町で2024年4月13日午前8時17分、西脇真一撮影

 また、英国の市場調査会社の調べで「サロンパス」は「鎮痛消炎貼付(ちょうふ)剤」の分野で、2016年から7年連続で世界シェア1位に認定されている。

 久光製薬はサロンパスの原点にもつながる「『手当て』の文化を、世界へ」を掲げる。SAGAグローバルリサーチセンターでも皮膚を経由して体内に薬剤を送り込む「経皮薬物送達システム(TDDS)」製剤の研究・開発に力を入れる。

 TDDS製剤には薬を飲み込めない人に使えるなどのメリットがある。また、薬物のついた微細な針をパッチに並べ皮膚に貼る「マイクロニードル」の技術により、貼り薬ではできなかった薬物の投与も可能となる。

 同社はセンターを「世界に新薬を生み出す研究・開発の拠点にしたい」と意気込む。【西脇真一】

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