「ぼっち人事」という言葉をご存じだろうか。人事領域では当たり前になりつつあるワードだが、企業において一人で人事業務全般を行う担当者を指す。

 経済産業省が2022年に発表した「有力企業における人事担当者数」の調査によると、約5割がぼっち人事、もしくは専任の人事担当者がいなかった。

 当社はこのぼっち人事や人事がいない組織を含む、少人数精鋭の部署「人事部門」のお助けマンとして企業のサポートを行う。

 全6回のコラムでは、事例を通して、少しでも人事の皆さまに役立つ情報を伝えていきたい。

 第1回は、ぼっち人事の奮闘記である。

 今回の主役は未経験でIT企業の人事担当者に採用されたAさん。ずっと憧れだった人事職に就いたものの、人事部門はAさん一人。研修や引き継ぎもない中、まず取りかかったのが採用業務だった。

 求人広告を見よう見まねで作成してもうまくいかなかったAさんは、組織の魅力を求職者に訴求するため社員インタビューを開始した。だがそこから聞こえてきた声は「人事なんだから私たちに頼らないで」という言葉だった。

 伝えた本人の真意は分からないが、Aさんにとっては胸がしめつけられる言葉だった。追い打ちをかけるように、社員はどんどん辞めていき、求人を出しても人が集まらない状況が続いた。

 そこでAさんは「対症療法ではなく体質改善が必要だ」と考え、社長を説得し当社へコンサルティングを依頼してくれた。

 課題を抽出すると、社員との対話の機会が少ないことに気づいた。Aさん自身が一人一人に感謝を伝える活動を始めると、少しずつ社員が心を開いてくれるようになった。

 それからは朝礼の設計を変え、相互理解のための強み診断やチームビルディング研修を実施した。その結果、離職率は42%から6%に。Aさんの行動が組織を変え、今は新たな目標に向かって前進している。困ったら一人で抱え込まず、相談機関を活用してほしい。(ワダチラボ社長)

次回は照屋ゆきの氏(照屋食品社長)です。

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