17日、経団連は次期会長として、副会長を務める日本生命会長・筒井義信氏の起用を発表した。金融業界からの選出は初となる。
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そんな中注目されたのが、2025年5月で任期満了を控える十倉雅和会長からの“置き土産”。高齢者数がピークを迎える2040年を見据えた中長期ビジョンの中で、「富裕層への課税強化」が示されたのだ。富裕層の所得税を段階的に引き上げることで、2034年度までに5兆円程度の財源を確保し、現役世代の社会保険料を抑えると提言している。
十倉会長は「真っ正面から議論してほしい」と呼びかけたが、これに楽天グループの三木谷浩史会長が「経団連終わってる」とXで指摘。「日本の最高税率は55%で主要国ではダントツ。日本から富裕層は居なくなり、海外で起業する人が増えるだろう。頑張って成功した人に懲罰的重税、正気か」と批判した。Xでは「国が衰退する」「公平とは何か」などの声があがる中、『ABEMA Prime』では、富裕層への課税強化の是非や、税負担の公正公平について考えた。
■職業“お金持ち”さん「私の周りは続々と海外に」 自身は?
『職業、お金持ち。』の著者で、国内外で3社を経営し個人投資家でもある泉あすか氏。直近のお金の使い方を問われると、「普段は国内と国外が半々で、2日前までミクロネシア連邦に旅行していた。今週だけで1000万円以上は使っている。食事は1食10万円ぐらいまでが多い」と説明。収入源は「20歳から金融投資をやってきた。今は投資コミュニティーの運営収益もある」と語る。
泉氏の周りでは、「続々と海外に出ている」という。「シンガポールやドバイが多く、私もコロナ前までシンガポールに住んでいた。同じだけ稼いでも税金で半分持っていかれるのとでは違う」。
自身については「食事がおいしく、安全・快適で物価も安い日本が好きだ。再び海外へ出るのは、子育てなどのライフスタイルが変わった時だろう」と話すが、周囲からは「なぜ日本に住み続けているの?」と言われるそうだ。「税率もそうだが、人口が減少する国は、経済的に衰退する。子どもの教育を考えた時に、成長する国で育てたいという人が多い」。
■パックン「アメリカ国籍だと海外にいても課税されるけど、優秀な人は集まっている」
金融所得課税に詳しい東京財団政策研究所 主任研究員の岡直樹氏は、「十倉会長は格差拡大に危機感を相当持っているのでは。日本では社会保険料が右肩上がりで、所得税や消費税より額が大きい。その負担を考えた時に、富裕層が目に入ってきたのだろう」と提言にコメント。
一方、パックンは、「働いて稼ぐ人と、ぼーっとして稼ぐ人が同じ税率でいいのか」と問いかける。「所得税を45%納めているのに、売却益は20%。“すごいお金持ち”は収入のほとんどがキャピタルゲインで、すでに持っている資産が増えていく。朝から晩まで働いている人は、『20%でも嫌がるのか』と違和感を覚えている」。
これに岡氏は「アメリカでは、イーロン・マスク氏などのお金持ちは資産を売らないため、課税する機会がない。資産を持っているだけで、融資も受けられる。バイデン政権では、資産を時価評価して課税する議論もあったが、今後は実現しないだろう」と指摘。また、国籍を持っていると海外にいても所得税を申告する義務があるという、アメリカの税制度にも触れた。
これにパックンは、「どこにいても課税されるけど、優秀な人はアメリカに集まっている」と指摘し、「社会保障費と税を合わせた国民負担率を見ると、日本はOECD(経済協力開発機構)36カ国中22位と高くない。負担率が高いフランスにもお金持ちはいて、生まれ育った国を税率だけで捨てる人はそんなにいない」との考えを述べた。
■「日本の金融所得課税は先進国の中ではタックスヘイブン的」
今年7月のG20財務相・中銀総裁会議では、超富裕層への効果的な課税のため協力することを合意した。岡氏は「日本は資源もあまりなく、人材に頼っている国だ」とし、「外国で才能を発揮してもらい、“ふるさと納税”のように日本へ投資してもらえば良い。G20といった国際的枠組みで、税率が低い国をやめさせれば、税金を理由とした移住はなくなるとの議論もある」と提案する。
パックンも「法人税と所得税の最低税率を一律に義務づける条約を作り、入っていない国に対して罰則を設けてもいい」との認識を示し、「日本で『社会保障改革が必要だ』と言うが、具体的にどうするのか。年金に頼る高齢者を切り捨てるとしたら、現役世代も良いとは言わないだろう。一番大勢がうなずけるのが、お金持ちからの徴収だ」とした。
今回の経団連によるビジョンでは、「2034年度には5兆円程度の財源」と試算されているが、岡氏は「所得税の最高税率を上げても、さほど入らない」と見ている。「金融所得課税で、日本は20%。イギリスが税率を上げ、ドイツやアメリカも州税と合わせると20%以上だ。先進国の中では、日本はタックスヘイブン的な国と言える」と指摘。
富裕層への金融所得課税をめぐっては、石破総理が就任前の9月時点では「実行したい」とするも、就任後の12月には「貯蓄から投資の流れを止めてはいけない」と発言がやや軟化。一方、経済同友会の新浪代表幹事は「25%くらいはあっていい」とコメントしている。
これに泉氏は「嫌ではあるが、周囲の投資家も25〜30%程度までなら飲めると思う。事業所得よりだいぶ抑えられていることには間違いない」と、許容範囲を示した。
■田村淳「俺は税金取っていい派だけど、政策への信頼がない」
タレントの田村淳は「俺は税金は取っていい派だけど、政策への信頼がない」と、根本へ疑問を投げかける。「国を運営する上で、“これだけ必要”という部分と、見直してもいい部分があるはず。『ここは削れたけど、ここが足りない。だから増税に踏み切る』なら納得できるけど、何が足りないかわからないまま、景気が上向いた時には消費税が上がり、消費が冷え込む、という繰り返しだ。税金の使い道を決める人との信頼関係がこんなにない国も珍しいのではないか」。
これに泉氏は「シンガポールに住んでいた時、みんな政府のことを信頼していた。使い道が誰でも見られて、『これに必要なら税金を取られても仕方ない』と感じられた。しかし、日本では納めた税金が役に立っている実感がわかない」とコメント。岡氏は「誰かひとりで決められる話ではなく、政治家や官僚とコミュニケーションしていくことが大事だ」と答えた。(『ABEMA Prime』より)
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