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 12月末の「ふるさと納税」の期限が迫るなか、駆け込みで申し込みを考えている人も多いのではないでしょうか。こうしたなか、ふるさと納税の寄付金を財源として移住者が8.5倍に増えている“ある街”を取材しました。

■絶景雲海に名瀑…ふるさと納税“日本一の街”

宮崎県都城市 この記事の写真

 一面に広がる雲海は、まさに“雲のじゅうたん”。ふるさと納税の寄付金194億円を集め、2年連続「日本一」に輝いた宮崎県都城市。

 轟音と共に水しぶきを上げるさまは圧巻の光景、「日本の滝100選」に選ばれた名瀑「関之尾滝」。

 滝の上流には、34万年の長い年月をかけて形成された「関之尾の甌穴群(おうけつぐん)」。ゴツゴツとした岩がつながった1枚の岩盤で、幅は最大80メートル、長さ600メートルと、甌穴群としての規模は世界一といわれ、国の天然記念物に指定されています。

 およそ5000坪の広大な敷地に広がる島津家発祥の地「都城島津邸」。日本庭園は趣ある風情を醸し出し、昭和天皇が宿泊したことがある本宅など、国の有形文化財に登録されています。

都城産の「宮崎牛」

 そして、都城市といえば、鉄板の上で食欲をそそる都城産の「宮崎牛」。きめ細かな霜降りと、色つやの良い柔らかさが特徴で、うっすらピンクがかった“ミディアムレア”は究極の味わい。

 霧島連山から流れ出る湧き水で作られた、本格芋焼酎「霧島」とのハーモニーは格別です。

 霧島酒造の直営施設では、焼酎の製造工程の見学や試飲ができることもあり人気です。

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■子育て世代を呼び込む仕掛け

■子育て世代を呼び込む仕掛け

 “肉と焼酎の街”として知られる人口およそ16万人(12月1日時点)の都城市で今、ある変化が起きています。

移住に関する相談件数(2023年度)

 昨年度の全国の移住相談件数で、2022年度トップだった長野県を抑えて、移住相談件数トップに躍り出た宮崎県。そのうち、およそ7割を占めたのが都城市なのです。

都城市への移住人口推移

 昨年度の移住者の数は3710人と前の年より8.5倍も増え、13年ぶりに人口増加に転じました。

 その要因となったのが、ふるさと納税です。

都城市ふるさと納税返礼品ランキング

 住んでいる地域とは別の自治体に寄付をすることで、特産物などの返礼品が受け取れるふるさと納税。都城市の昨年度の返礼品は1位が豚肉、2位が牛肉など、全体の寄付金の8割を肉と焼酎が占めています。

 他にもウナギやサツマイモといった魅力的な商品がたくさん。

都城市にふるさと納税 東京から(30代)
「(Q.都城市にふるさと納税したことは?)あります。返礼品は和牛です。ほぼ毎年(ふるさと納税で)頼んでる。質が良くて、量が多いので。ふるさと納税で知名度が上がって、それが移住とかにつながる。ふるさと納税の意義としてはあるんじゃないかな」

 このふるさと納税で集めた全国トップの194億円の寄付金を財源に都城市が行っているのは…。

都城市 人口減少対策課 新坂斉士さん 都城市 人口減少対策課 新坂斉士さん
「子育てに関する3つの完全無料化と充実した移住応援給付金をさせて頂いて、3710人という多くの移住者が来られた。20代・30代・40代以下の現役の子育て世帯が83.1%ございます」

 3710人の移住者の8割が“子育て世帯”という都城市。“第一子からの保育料無料”や、移住をするだけで1世帯最大500万円が支給される「移住応援給付金」などを行っています。

 ふるさと納税の寄付金を財源に、今都城市への移住者が様々な“恩恵”を受けているのです。

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■移住で500万円、保育園無料…都城市での暮らし

■移住で500万円、保育園無料…都城市での暮らし

大槻さん家族

 今年2月、兵庫県丹波篠山市から移住してきた4人家族の大槻さん。

妻・蘭さん(30代)
「(移住応援給付金は)私たち4人で500万円もらえたので」 子育て世帯に嬉しい支援

 移住応援給付金は500万円。さらに、子育て世帯には嬉しい支援があるといいます。

妻・蘭さん
「2人とも同じ保育園に通っています。保育料が無料」

 都城市では、子どもを産み育てやすい環境の充実を図るため、第1子からの保育料が無料に。これらは、ふるさと納税の寄付金を財源に捻出されています。

妻・蘭さん
「子どものほうにも手厚い支援があるので、子育て世帯にはすごくありがたいですね。(通っている保育園も)移住の支援金をキッカケで引っ越してきた家族の方がやっぱり多くて。友達も移住してきた子たちが結構多くて。休みの日はつながりが持てたので、一緒に遊んだりとか」 長女・千陽ちゃん(5)
「たのしい〜」

 はなれに案内してもらうと…。

妻・蘭さん
「焼き上がったのが、この器なんですけど…」 陶芸家でもある大槻さん夫婦

 陶芸家でもある大槻さん夫婦。現在は作品などを展示するギャラリーや陶芸体験が出来る工房を製作中。子どもたちも、毎日のように陶芸と触れあっているといいます。

長女・千陽ちゃん
「でてきた、おちそうだよ」 妻・蘭さん
「ここまで充実したところはないね」 夫・一仁さん(40代)
「生活するうえでも、ちょうどいい田舎だなって。子どもたちが遊ぶ公園とかもいっぱいあって。移住して良かったなって思います」

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■ふるさと納税の恩恵は…保育士にも

■ふるさと納税の恩恵は…保育士にも

今年6月に都城市に移住

 都城市の保育園では、子どもだけでなく“先生にも恩恵”があるといいます。今年6月に都城市に移住し、7月からこちらの保育園で2歳児クラスを担当している石井玲奈さん。

石井さん
「(Q.移住はどちらから?)神奈川から来ました」
「(Q.ご年齢は?)今年32歳になります」

 東京や神奈川で10年以上、保育士として働いていたという石井さん。

「この環境がいいなって」 石井さん
「自然が豊かっていうところが一番で、園庭とかの広さもやっぱり都内の保育園とかどこ見ても、20〜30分かけて歩いて公園まで行くっていうこともしなくていいし。関東にいた時は、通勤が電車だったので、通勤ラッシュとかに巻き込まれると、身体的ストレスはすごかったので。今は車で通勤だし、時間もゆっくりしている。せかせかする感じがない、この環境がいいなって。“田舎すぎず都会すぎず”とてもいい所」

 他にも、都城市へ移住をするきっかけの一つとなったのが…。

石井さん
「保育士として就職した時に、就職支援金としていただいたものです」

 都城市では、保育士支援制度として就職支援金で20万円、継続支援金も含めると最大40万円が支給されます。

 石井さんは、夫と2人暮らしで「移住応援給付金」が100万円、就職支援金20万円とあわせ、120万円が支給されました。これも、ふるさと納税の寄付金が財源です。

石井さん
「大きかったです。生活が潤います。経験年数があるというので考慮してもらって、給料もそこまで(以前と変わらない)。保育士をいったん辞めて『戻りたいな』って思う瞬間が、みんなあると思うんですよ。こういうの(制度)があると『もう1回保育士に戻ってみようかな』というきっかけにもなると思うから、すごく良いなって思います」

 移住してきたほかの保育士も…。

移住してきたほかの保育士も… 宮崎県内から移住した保育士(29)
「子どもがいるので、やっぱり生活面ですごいありがたいなって」 熊本から移住した保育士(39)
「子ども用品とかがどうしてもいっぱい買わないと足らないので、そういうので助かったりはあります、あと食費とか」

 物価高の今、ふるさと納税の恩恵を受けている移住者。恩恵を受けているのは、移住者だけではありません。

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■最先端医療…地元民にも恩恵

■最先端医療…地元民にも恩恵

 都城市で最大規模を誇る病院。昨年度は県内でもトップクラスの救急患者、およそ3500件を受け入れ、この日も多くの患者が診察を待っていました。

都城市郡医師会病院 岩切弘直副院長 都城市郡医師会病院 岩切弘直副院長
「高齢の方も安心して、地元で完結するような医療が目指せる」 「心臓・脳血管センター」を新設中

 こちらの病院では、現在の病棟の隣に「心臓・脳血管センター」を新設中。その完成予想図です。延べ床面積は、およそ3000平方メートル。総事業費は47億円で、およそ3億7000万円以上がふるさと納税の寄付金からまかなわれているといいます。

宮崎市内まで行って受けてた治療を… 岩切副院長
「これまでは宮崎市内まで行って治療を受けなければいけなかった。心臓の弁膜症であったりとか、そういった治療を都城市内で受けれるような施設に」

 これまでは心臓・脳疾患の重症患者はドクターヘリなどで宮崎市内の医療機関に搬送するしかありませんでした。心臓・脳血管センターの完成により、都城市でも高度な医療が提供できるようになり、搬送時間の短縮にもつながります。

 集中治療室(ICU)などを増床し、放射線装置を備えた「ハイブリッド手術室」なども新設するといいます。

岩切副院長
「(心臓や脳の疾患は)ご高齢になるほど増えてくる病気です。そういった疾患に安心して対応できるような施設というのは、地元に必要不可欠だと思います」

 稼働は来年6月ごろを予定しているといいます。病院の利用者は、次のように話します。

都城市民(60代)
「患者さんにとっても家族にとってもありがたいばかりです。(ふるさと納税で)有効活用というか」 都城市民(50代)
「ふるさと納税が入っていることによって、医療もしっかりしてくれるならありがたい。心臓とか難しい病気になると、宮崎市のほうに1時間くらいかけて医大のほうに送られていたりするので。そこが充実してくれると、(約1時間が)何分で治療に入れるというのは大きい」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年12月18日放送分より)

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