1年あたりの飲食店の倒産が、過去最多となった。
帝国データバンクが9日発表した集計によると、今年1月から11月までの倒産件数は816件。
これまでの最多である2020年の780件を、残り1カ月を残してすでに上回った形だ。
2020年は新型コロナの感染拡大で飲食店が大打撃を受けた年。
それより多くなったのはいったいなぜ?コロナ禍からの客足回復や、インバウンドの急拡大で、飲食店の景気は上向いているのではなかったのか。
飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに話を聞いた。
■『飲食店のおよそ7割』売り上げがコロナ前まで戻らず
【飲食店専門経営コンサルタント 成田良爾さん】
飲食店のおよそ7割は、まだコロナ前まで売り上げが戻っていません。
売り上げが減っているのに、人件費が高騰し、物価高で仕入れ費などが上昇。光熱費も上がっています。
飲食店の経営は「FLR」が重要です。
・F(food):材料費
・L(Labor):人件費
・R(Rent):家賃
つまりコストです。
経営を安定させるには、売り上げとFLRが適切なバランスであることが必要ですが、今、売り上げが下がりFLRが大幅に上がっています。
だからといって、料理の価格を上げれば、客足が遠のく可能性がありますし、飲食店にとって大変厳しく難しい状況です。
■コロナ関連融資の返済開始がさらに打撃に
そこに加えて、コロナ関連融資(いわゆる「ゼロゼロ融資」)の返済が始まりました。
2020 年3月に始まった中小企業向けのこの融資の、無利子、無担保期間は最長で3年。
元金返済開始までの措置期間は最長5年です。
融資を受けた企業の大半は、2023年7月頃から2024年4月頃までの間に返済が始まったのです。
売上げが減っているのにコストが増え、さらに返済まで始まった。
完全に負のスパイラルです。
コロナになった時より今の方が厳しいと言えます。
■「簡単ネット予約」「キャッシュレス」 デジタル化も負担に
そして、実は飲食店の経営に打撃を与えているものの1つが「デジタル化」です。
例えばネット予約。
好きな時間にカンタンに予約できることで、「とりあえず押さえておいて、近くなってからお店を決めればいいや」と軽い気持ちで重複予約する人が増えているのです。
ここ数年、無断キャンセルやドタキャンが増え、ネット予約会社が調査した所、同じ名前で同日同時間帯に複数の予約を入れている人が多数いることが判明しました。
会社はドタキャンした人に対してペナルティを科す対策を行っていますが、それはトラブルが起きた後の話です。ドタキャンされた店はたまったものではありません。
また、デジタル化によって、ネット予約の手数料やキャッシュレス決済手数料といった飲食店の経費負担も増えており、特に中小企業には重い足かせになっています。
デジタル化によるメリットは多くありますが、様々な負担も増えていて、飲食店にとっては厳しい状況です。
これから忘年会やクリスマスといったイベントが続き、飲食店にとっては大切な時期です。
皆さんが楽しい時間を過ごすためにも、マナーを守って頂ければと思います。
(飲食店専門経営コンサルタント 成田良爾さん)
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