※この記事には性被害に関する表現・記述があります
「オナニーしようとした」
女児のパンツ2枚を盗んだなどの罪に問われた22歳の男は、2年前にも水着を盗む目的で、白昼の小学校に侵入していた。
裁判が進む中で、被告の幼少期の経験や、仕事へのプレッシャー、保護司との不和などの背景が見えてきた。
【この記事は前編・後編の後編です】
◇◇◇「死ぬくらいなら好きなことをやろうと」
別の日。
Y男被告本人への質問が行われ、弁護士から犯行当日の心境などが問われた。
「死ねるかな。死ぬくらいなら好きなことをやろうと思い、被害者のAさんの自宅付近まで歩いて行き、自転車のサドルに近づいて、自分の性欲を満たそうとした」
「Aさんの洗濯物が視界に入って、もしかしたら子どもの物があるかもと思い確認した」
うつむき気味に答えるY男被告。犯行について振り返った上で、謝罪したいという気持ちはあると述べた。
「自分がしたことは身勝手で、大変不快な気持ちにさせた」
◇◇◇「プレッシャー受けたら何してもいいの?」
――なぜ犯行に及んだのか。プレッシャーを受けたら何をしてもいいのか?
「いいえ」
「自分はプレッシャーを感じたことはありますが、すぐに犯罪に手を出そうとしていた訳ではない」
「犯行前に行われた保護司との面談で、きつく『バイトしろ』と言われたが、その夜、両親に対しては、一人でバイトを探すと言って、自分なりに頑張ろうとしていることを見せ、なんとか頑張ろうと思っていた」
「もう二度としない」
――自暴自棄になってやったことが、子どもに性的関心が向いたのは何故?
「自分は少し病気的なものがあると思います」
――『小児性愛障がい』というのは治療法が確立されているものの、治療は自発的に受けなければ効果は薄いといわれている。自発的ならは一定程度効果があるが、治療を受けるか
「はい」
続いて、検察官が口を開く。
Y男被告が、高校生の頃にも女子生徒の靴や水着を盗んでいたこと、そして2年前に水着を盗む目的で、平日の白昼、児童のいる小学校に侵入したとして有罪判決を受けた事例を挙げ「性的な傾向が出た」と指摘した。
◇◇◇「一番は彼女を作ることだと思う」
――自制心はあったのか?
「ありました」
――なぜ侵入した?
「欲しいと思ったから」
――2年前に有罪判決を受けてどう思った?
「まずはバイトをしようと思った。何か物事に集中すれば性的なことを気にしなくてもいいかと思った」
――保護司の言うこと信用していた?
「初めはそう思っていたが、父親が保護司に『バイトを強く勧めるのをやめてくれ』と詰め寄ったときに『そういうことを言いましたかね?』ととぼけた態度を取ったのを見て…」
――犯行時に見つかるとは思わなかった?
「バレるかもしれないと思ったが、止められなかった。しようと努力したが、結果的にできなかった」
Y男被告は、今後について問われると、「バイトをしたいという気持ちは本気だった」とした上で、仕事をしながら資格を取り、できれば正社員として就職したいとの思いを語った。
そして、小児性愛障がい的な犯行の更生について「一番は彼女を作ることだと思う」との見解を示した。
◇◇◇再犯おそれ「極めて大きい」懲役2年求刑
論告求刑で検察側は、犯行は「幼稚園児から中学生くらいの女の子が使用済みの下着を使って自慰行為をすれば、性的興奮を強く味わえ、気持ち良く自慰行為ができるという被告の性癖から引き起こされた」と指摘。
同種の再犯に及ぶおそれは極めて大きく、相当期間、矯正施設に収容して改善教育を施すべきとして、懲役2年を求刑。
一方の弁護側は、社会内での更生は可能と主張。
心理的圧迫に立ち向かう上で、被告には弱さ、幼さがあるものの、両親と共に治療を行うことが最善で、罰金刑を含めてできるだけ寛大な判決を望むと結んだ。
◇◇◇「財産的な被害額は少ないが」下された判決
10月21日。
松山地裁の渡邉一昭裁判官は、Y男被告に対して、懲役1年4カ月の実刑判決を言い渡した。
理由の中で、渡邉裁判官は、保護観察付きの執行猶予期間中に行われた犯行であることに触れ、性欲を満たしいという動機は身勝手で酌量の余地は無いと指摘。
「財産的な被害額は少ないものの、犯行の目的や態様、被害品の性質などに照らし、本件犯行の違法性を軽くみるとこはできない」とした上で「事件の背景にある自身の問題と向き合い、専門的な治療を受ける意思を示していること」などの事情を踏まえても、実刑判決が相当と結論付けた。
◇◇◇鑑別所で行われる「知能検査」とは
裁判の中で、Y男被告の父親が証言した、少年鑑別所で行われた「知能検査」とは、一体どのようなものなのだろう。
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