東京都は、都庁第1本庁舎(新宿区)の壁面に映像作品を投影するプロジェクションマッピングで、上映前に流す広告の募集を始めた。売り上げは今後の運営経費に充てられる。税金で実施されている投影事業には批判がある中、今回の広告募集には「税金の無駄遣いという都民からの批判をかわすための対応では」と疑問の声が上がる。(押川恵理子)

東京都庁の第1本庁舎の壁面に映し出されるプロジェクションマッピング。上映前に広告を流す=東京都新宿区で

◆「企業利益のために公有財産を使用」 都議会で疑義

 7日の都議会経済・港湾委員会で、対応をただされた都幹部は「経済活性化が目的」と説明。共産党の白石民男議員は「広告料を支払う企業の利益を増やすことに、共有財産の都庁舎を使うのか」と疑問を呈した。  投影面積は、建物への常設展示でギネス世界記録に認定された約1万3900平方メートルで、これまでに約39万人が観覧。都は広告媒体として「希少性、話題性が高い」と判断したという。   都庁舎でのプロジェクションマッピングは都と新宿区、東京観光財団でつくる実行委員会が今年2月に開始。2023年度の予算は7億円、24年度は9億5000万円を計上した。25年度当初予算案には7億9000万円を要求している。これまでに都議会では「行政が100%税金でなぜやるのか」などと批判され、7月の都知事選でも小池百合子氏以外の候補者が必要性に疑問を投げかけた。

◆経済波及効果は17億円超との試算も

 一方で、公益財団法人「日本観光振興協会」は、23年度の予算7億円に対し、17億5300万円の経済波及効果があったと試算した。  募集する広告枠は15秒から最長5分間。広告料金(税抜き)は1日の上映回数などで異なり、最低価格は1週間53万円、1カ月158万円。広告には「公序良俗に反しない」などの条件があり、有識者らの審査を経て早ければ来年1月から上映される。  都庁がある西新宿2丁目は都条例で屋外広告が原則認められていないが、今回は都広告物審議会が「公益目的のため」として特例で認め、新宿区も許可した。小池知事は「新たな観光スポットとなった。企業PRなどの場に活用いただきたい」と話す。 

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