社会人野球・沖縄電力の金城長靖(きんじょう・ながやす)選手。八重山商工高校時代、甲子園の長い歴史のなかで唯一、左右両打席でホームランを放つなど活躍したスター選手が、今シーズンで現役引退を発表しました。
現役最後のバッターボックスを見つめました。
春夏の甲子園で鮮烈な印象を残した八重山商工
あれから18年。旋風の中心にいたヒーローは目指していたプロではなく、沖縄で社会人生活を過ごしていました。今も、野球への情熱を持ち続けています。
▽沖縄電力 金城長靖選手
「ユニフォーム姿が落ち着く。履きなれてますし、身が引き締まる。家族にも感謝しながら、野球ができることにありがたく思っている」
社会人野球の沖縄電力は、アマチュア野球の最高峰である都市対抗野球に5回、日本選手権にも4回と、全国大会にも多く出場している、県内有数の強豪チームです。
高校卒業後、石垣島を離れ沖縄電力に入った金城さんは、18年間、チームの中心選手として活躍。ここ一番での勝負強いバッティングは、何度もチームを勝利に導いてきました。
「18年…長いなと感じますけど、もっとうまくなろうという向上心を持ちながらやってきたから、ここまで出来たのかなと思います」
▽田場亮平 主将
「野球部にとっては兄貴的な存在ですね」
「テレビの前で見ていたスーパースターと一緒に高いレベルの舞台でプレーできることは、本当に幸せ」
後輩たちからも慕われながら、現役最年長野手としてチームを支えてきたベテラン。しかし金城さんは今年、新たな道を進むことを決めました。
今年7月に行われた都市対抗野球。10年ぶりの出場を果たした沖縄電力は開幕戦で、去年の優勝チーム、トヨタ自動車と対戦しました。
試合は1点を争う好ゲーム、9回2死満塁と絶好のチャンスで金城さんに打席が回りました。
▽金城長靖 選手
「あの大事な場面で僕に回ってきたのも運命。打席に入る前から、これ打たなかったら引退だな、って。自分の中でも、思ったものがあった」
結果はファーストゴロ。
「走りながらここが限界かな思いましたね」
小学3年生のとき、島の小学生が集まったチーム「八島マリンズ」で始めた野球。中学時代の八重山ポニーズでは日本一に輝き、世界大会にも出場。
激しく檄を飛ばす、伊志嶺吉盛監督のもと、白球を追いかける青春を過ごしました。
「オールジャパンに選ばれたときが本当に分岐点というか。斎藤佑樹、田中将大のレベルの高さを見て、“今(プロに)行ったらダメだな” と思って。やっぱり今思えば、これだけ社会人で長く野球出来たので、正解だと思うようにしてます」
小学3年から、長く成長を見守ってきた伊志嶺監督は…
▽伊志嶺吉盛監督
「結果を出す、そういう選手ではあったね」
「3週間くらい前かな。監督も自分現役上がりますから、って報告があった。お疲れさま、よく頑張った、って。それしかないですよ」
アマチュア球界のトップ選手として駆け抜けた18年の現役生活、最後の公式戦には、最後の雄姿を見届けようと、家族や友人らがスタンドに集まりました。
▽妻・綾乃さん
「プレッシャーもあったと思うけど弱音ひとつ吐かず、よくやってくれたなと…。打席をもらえるのであれば、次はまた大きいのを狙って悔いのない最後になってほしいなと思います」
沖縄一をかけた、RBC杯決勝。3点をリードして迎えた最後の攻撃で、そのシーンは訪れました。
「代打 金城長靖」
▽金城長靖 選手
「初めて打席で泣きそうになって。感謝の気持ちでした」
現役、最後のバッターボックス。その一振りに、思いを込めました。
「本当にやりきりました。18年間、最後も皆がつないでくれて、結果打てなかったんですけど本当に最高の野球人生でした」
「結果で恩返ししたかったけど、まぁこれも自分かなと、本当に感謝ですね」
金城さんは今後コーチとして沖縄電力の野球部に残ります。
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