岡山からパリ五輪のセーリング競技出場を目指す瀬戸内市出身の山本佑莉(やまもと・ゆうり)選手です。
セーリングは風や波・潮の流れや雲の動きなど様々な自然の変化を観察しながらヨットを操り、海に浮かべられたブイを順番に回って順位を競う競技です。セーリング競技は、国際大会の多くが海外で行われるため日本勢にとっては多額の遠征費も課題となっています。
そこで地元・瀬戸内市では「ふるさと納税」を活用し山本選手のパリ出場を後押ししています。
地元の応援を力にパリ五輪を目指す山本選手の決意に迫りました。
「洋上のチェス」多いときは100艇以上が着順を競う
風を頼りにヨットを走らせ海上に設置されたコースで着順を競うセーリング。オリンピックでは第2回大会から採用されている競技です。
ヨットをたくみに操るのは山本佑莉選手。パリ五輪出場が懸かる2週間後のラストチャンスに向けて地元・牛窓の海で練習に励んでいます。
(山本佑莉選手)
「セーリングはエンジンを使わないので帆で風を受けて進んで、自然を味方にできた時はとても楽しい」
セーリングは風向きや潮の流れを読み、多いときは100艇以上で優位なポジションを取り合うことなどから「洋上のチェス」とも呼ばれています。
航路によってスピードが変わり順位にも大きく影響するため、ヨットの上では舵をとるティラーと風を受ける帆の繊細な操作に加え、全身を使って船を安定させることが求められます。
(山本佑莉選手)
「風が弱いと頭脳戦になるんですけど、風が強くなるとアグレッシブに動かないといけないので、風が強いときと弱いときで競技が違うような感じ」
夢をあきらめきれず半年で現役復帰
山本選手は兄に憧れて邑久高校のヨット部に入りセーリングを始めました。大学4年生の時には全日本選手権を制覇。その後は東京五輪出場を目指していましたが叶わず、2021年に指導者へ転向しました。しかし…
(山本佑莉選手)
「中途半端にやめたことが自分の中でもやもやしていて、こんな中途半端なコーチは自分が選手だったら嫌だなと思ったので」
しかし、夢をあきらめきれず半年で現役復帰を決意。現在は牛窓ヨットハーバーで宿泊施設の管理業務などをする傍ら、パリ出場を目指して競技に取り組んでいます。そんな山本選手に大きな壁が立ちはだかります。
(山本佑莉選手)
「1回の遠征で100万円はかかる。1月のアルゼンチン遠征は航空券だけで90万円かかった」
大会が行われるのはヨーロッパなどの海外がほとんど。自然も相手となるセーリングでは、コースの特徴を把握するため早めに現地入りする必要があり、多額の遠征費がかかります。山本選手を支えるために地元の瀬戸内市が立ち上がりました。
地元・瀬戸内市の応援を受け大一番に挑む
(武久顕也瀬戸内市長)
「市の方で何らかのバックアップをできないかということで始めたのが、ふるさと納税制度を使って、みなさんから寄付していただいたものを原資にしながら、山本選手の応援をしていこうと」
市では昨年2月から山本選手を応援する「ふるさと納税」の募集を始めました。目標金額は1000万円ですが、これまでに約700万円が寄せられ、多くの人が山本選手の挑戦を後押ししています。
さらに、技術面でサポートするのはアメリカ出身で全米チャンピオンに輝いたこともあるビル・ハワードコーチ。山本選手が強豪国相手にも対等に渡り合えるよう、世界レベルのノウハウを指導しています。
(ビル・ハワードコーチ)
「山本選手は吸収が早く決してあきらめない。環境に適応出来るか、コースを理解出来るかだが、チャンスは十分あると思う」
いよいよ2週間後に迫ったパリ五輪への最終関門・フランスで開催される「ラストチャンスレガッタ」。五輪への切符を獲得できるのはわずか上位2人です。
(山本佑莉選手)
「いろんな人にふるさと納税してもらって、大会に何回も出場出来ているので、その人たちの気持ちをしっかり胸に刻んでレースしていきたい」
牛窓からパリへ。地元の期待を追い風に、山本選手は大一番に挑みます。
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