特定地域づくり協同組合という制度を聞いたことがあるでしょうか。人口減少地域の働き手確保を支援する国の事業です。
奄美市ではこの制度を活用して夏の観光シーズンや冬の収穫期など、繁忙期に応じて人材を確保する取り組みが始まっています。東京から奄美に移住した男性を取材しました。
(渡辺智也さん)「奄美産のブランド豚を使ったソーセージです」
奄美市のリゾートホテルで接客の仕事をしている渡辺智也さん(28)です。今年1月、勤めていた東京の保険会社を辞め、奄美市に移住してきました。
(奄美市に移住 渡辺智也さん)「奄美市がやっている就労体験を利用して、すごく人との縁を感じた」
渡辺さんは、このホテルに就職したわけではありません。奄美市の特定地域づくり協同組合、「奄美市しまワーク協同組合」に登録している派遣労働者です。
去年4月に立ち上げられた組合には現在、ホテルや飲食店、農家など11の事業者が加盟。登録した人は組合から毎月の固定給をもらい、観光シーズンの夏はホテル、冬のタンカン収穫の時期は農家など、繁忙期にあわせて組合に加盟する事業者の仕事を割り振られます。
現在、渡邉さんを含めて県外からの移住者を含む4人の派遣労働者が登録していて給料の一部を国が助成します。
(奄美市しまワーク協同組合 長瀬悠事務局長)「ハイシーズンのみ雇用したい事業者を救出したい思いがあった。リゾートホテルは夏、農家なら冬に人がほしい。そういうニーズには応えられている」
奄美市の人口は、現在およそ4万人。合併した2006年以降、18年で1万人近く減りました。また、高校卒業者の85%は就職や進学などで島を離れます。
島外から奄美市へ移住してきたIターン者の推移のグラフです。2016年以降増え続け2021年には470人でしたがここ数年は300人台。依然、労働力不足は深刻です。
(記者)「こちらのホテルでは派遣を受け入れていますどのような思いで派遣を受け入れているのでしょうか」
渡辺さんが働いている奄美市のリゾートホテルでは、組合制度を使い、これまでに渡辺さんを含めて2人の派遣労働者を受け入れました。
(ティダムーン 太田善文支配人)「人が多い時と少ないときがある、雇用のバランスが難しい。期間を決めて働いてもらえるのは、ありがたい取り組み」
組合から支払われる給料は月17~18万円。副業は認められています。
この日渡辺さんが訪れたのは奄美市の繁華街、屋仁川通りにあるカフェバーです。移住して以降常連客となり、今ではアルバイトとしてカウンターの中に入ることもあります。
Q.親しくなってお店を手伝ってもらった?
(カフェバーen 赤近洋典店長)「そうですね、あまり島にいない爽やかな感じ」
明るく接客する渡辺さんですが、島へ移住する前は悩みを抱えていました。
(渡辺智也さん)「前職がかなり忙しくて、私生活も侵すような状況だった。都会の生活を脱して来たいと思った」
奄美大島には人材派遣会社がありません。奄美市しまワーク協同組合は、今後、新しい働き方として島の内外から働き手を増やしたい考えです。
(奄美市しまワーク協同組合 長瀬悠事務局長)「企業からのニーズが非常に多い。スタッフは全国で人材の奪い合いになっている、内努力しながら人材を確保していく」
(奄美市に移住 渡辺智也さん)「本当に奄美はいい場所。文化ももちろん海も山もありますのでいろいろ楽しむこともできますし、実際来てみてほしいというのが一番の思い」
忙しい時期に人手が欲しい事業者と奄美市しまワーク協同組合に雇用されることで、安定した収入を得られる労働者。この仕組みが成功すれば移住者を呼び込み、地域を活性化させる糸口になるかもしれません。
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