狭い県土に多様な動植物が生息する沖縄。固有種がいれば、本土にはいても沖縄本島にはいない種も。その一例が、「シカ」だ。しかし今月、沖縄本島にいるはずのないシカが、本島北部・国頭村の路上で目撃された。シカはいったいどこから来たのか。徹底追跡した。
取材のきっかけは、視聴者から寄せられた映像。10月21日、「やんばる」と呼ばれる山林地域を通る県道の路上にいたのは、立派なツノを持つ雄のシカだった。
ー映像の音声ー
息子「シカが目の前にいます」
父 「なんでシカがいるの沖縄に? シカっているの?」
息子「脱走した? 動物園から逃げたんじゃん?」
父 「脱走した…?」
息子「もしかして動物園から脱走した?」
目撃者に話を聞くとー
▽撮影した目撃者
「ゆっくり走らせていたら、車道をふさぐかたちで鹿が立っていた」
「特に威嚇したりとか、そういう行動はなかったので、車を恐れている感じではないのかなと」
そしてこのシカが目撃された2日後にも、近くの林道で2例目の目撃情報が報告された。これまで沖縄本島での生息は確認されたことがないシカ。目撃されだしたのはごく最近のことのようだ。国頭村の住民は…
▽国頭村の住民
「この近くにはヤンバルクイナが来るんですよ。そういうのは見たりするけど、シカは見たことないですね…」
「森を案内されているガイドさんたちからも聞いたことはない」
鋭いツノを持つ雄のシカ。村や警察は、見かけても決して近づかないよう注意を呼びかけている。
それにしても、いるはずのないシカはどこから来たのか。取材でいくつかの可能性が浮かび上がってきた。
▽取材した宮城恵介記者
「沖縄には、本島の西に浮かぶ阿嘉島などの慶良間諸島に「ケラマジカ」が生息していますが、本島にはシカの生息は確認されていません。県の担当課によるとケラマジカが海を泳いで本島に渡ったり、誰かがフェリーに乗せて本島へ運んだ可能性はあるものの、いずれも可能性は低いとしています」
慶良間諸島は、那覇市まで直線距離で約30キロ、国頭村までだと約100キロ離れている。誰にも目撃されずに泳いで渡りきったり、フェリーに乗ったとは考えにくいようだ。
目撃者は「動物園から脱走した?」と疑っていたが、その可能性はないのか、RBCが県内の動物園に取材したところ、シカが逃げたという情報はなかった。
次に、県内の動物の飼育状況を管理している「動物愛護管理センター」に問い合わせた。すると管理センターに登録されているなかに、シカが目撃された場所から数キロ離れた場所でシカを飼育しているという情報があった。
シカの飼育を登録していたのは、動物園の開園を目指して準備を進めている「やんばるライオン」という施設。施設の代表が取材に応じた。
▽やんばるライオン代表 松村一史さん
「来年には開けられたら(開業できたら)いいのかなと思っています」
「2月ごろにグランドオープン、それまでに生き物が場所などに慣れる期間も必要なので、そうしたところも加味してやれれば」
動物の展示や販売をする施設は、県の動物愛護管理センターに届け出る必要がある。「やんばるライオン」が管理センターに飼育状況を届け出たのは2017年で、これまでに2頭のシカを飼育していたが、2頭はすでに死んだという。
ちなみに「やんばるライオン」は当初RBCの取材に、「5頭飼育していた」と答えていたが、取材を重ねるなかで、「飼育していたのは2頭だった」と回答を修正している。
▽やんばるライオン代表 松村一史さん
「(2頭目は)去年の11月に亡くなってしまいました。オスで年齢は不詳ですけれども、年齢がかなり高かったと思うので、老衰であろうかなと」
やんばるライオンは「動物愛護管理センター」への定期報告で、飼っていたシカはすべて死んだとする報告を行った、としている。
そこで記者は、報告書資料の確認を何度か求めたところ、「探しておく」との回答。そして最終的には、「書類を見つけられなかった」と回答があった。
記者は報告を受ける側の管理センターにも問い合わせたが、「個別の事例に関する公開はできない」としていて、飼っていたシカの死亡を報告したとされる資料が本当に提出されたのかは、確認できなかった。
記者は、目撃されたシカに心あたりはないか、改めて「やんばるライオン」に確認した。
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