季節の変わり目に増えるという「帯状ほう疹」。体にピリピリと刺すような痛み・違和感・かゆみなどが主な症状ですが、中には夜も眠れない程の強い痛みを感じる人もいるようです。ある研究では80歳になるまでに3人に1人が発症するという推定もあり、決してひとごとではありません。どんな症状で、どんな人が発症しやすいのでしょうか?
「水ぼうそう」と同じウイルスで感染「帯状ほう疹」
帯状ほう疹はウイルスによって引き起こされる感染症です。「水痘帯状ほう疹ウイルス」と呼ばれるもので、これは水ぼうそうの原因となるウイルスと同じです。
帯状ほう疹が発症するメカニズムはこうです。初めて水痘帯状ほう疹ウイルスに感染したときは、水ぼうそうを発症します。大人の多くは子どもの頃に水ぼうそうを一度発症していると思います。
その後、ウイルスは神経節という場所に潜伏する形で体内に残り続けます。それが加齢やストレスなどでウイルスに対する免疫が大きく下がったときに、今度は帯状ほう疹として発症するのです。
症状はさまざま 最初は「筋肉痛?」と思う人も
いとう皮膚科クリニックの伊東詩織医師によりますと、帯状ほう疹は体の左右どちらか半分に症状が出ることが多いのが特徴だということです。初期症状は痛み・かゆみ・違和感などで、皮膚の症状としては赤み・水ぶくれなど。症状の種類はさまざまで、体のどこにでもできる可能性があるといいます。
数年前に帯状ほう疹かかったというMBSの金山泉アナウンサーは、最初の症状は「何か鈍痛がする」ことから筋肉痛だと思ったそうです。しかしそれがどんどん悪化したということです。このように初期症状ですぐに帯状ほう疹とわからないケースもあるため、人によっては皮膚科ではなく別の診療科に行くこともあるそうです。
症状の改善後も「服が擦れても痛い」 治療は早ければ早いほどいい
続いて、帯状ほう疹の合併症と“後遺症”についてです。目の症状として結膜炎・角膜炎・まれに失明となる場合もあれば、聴力低下やめまい、顔面神経麻痺、髄膜炎・脳炎になる可能性もあるということで、軽視できません。
伊藤医師によりますと、頭部に発症した場合は特に注意が必要で、帯状ほう疹の症状が治まった後も、まれに慢性的な頭痛が残ることがあるということです。
また、帯状ほう疹後神経痛(PHN)と呼ばれる、いわゆる後遺症が出る場合もあります。皮膚症状の改善後も痛みが数か月~数年続くというもので、帯状ほう疹症例の10%~50%が該当するため決して少なくありません。痛みの種類や程度はさまざまですが、「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」痛み、伊藤医師によりますと「服が擦れても痛い」という人もいるということです。
帯状ほう疹の主な治療には、抗ウイルス薬、鎮痛薬、痛みが強い場合は神経ブロック注射があります。抗ウイルス薬の投与については72時間以内が望ましいということです。
伊藤医師は「痛みだけだと帯状ほう疹とわかりにくいが、早いほど治療効果が高いため、疑わしい場合はできるだけ早く病院へ行ってほしい」としています。ただ、体の表面の皮膚だけではなく、口の中や耳の中に発症する場合もあり、わかりづらいケースもあります。
若い世代もリスクあり!?発症率が増えているワケ
では、どんな人がなりやすいのか?年代別・男女別の発症数を示したグラフを見ると、50代~60代で増加していて、発症数は女性の方が多いです(出典:「宮崎スタディ」宮崎皮膚科医会・外山望 ※1997年~2019年)。
しかし、高齢者以外の世代も要注意です。1997年の発症率を1とした場合の増減率で見ると、60歳以上や60歳未満だけではなく、20代~40代も「2014年」を境に大きく上がっています。
実は2014年は、子どもに対する水ぼうそうの「水痘ワクチン」が定期接種化した年です。ではなぜ、子どもへのワクチン定期接種の導入で、大人の帯状ほう疹の発症率が上がるのか?それは、“ブースターの機会減少が原因ではないか”と推測されています(国立感染症研究所「帯状疱疹ワクチンファクトシート」より)。
冒頭で説明したように、水ぼうそうと帯状ほう疹は、原因となるウイルスは同じです。そして多くの成人は、子どもの頃に水ぼうそうにかかっているため、免疫を体内に持っています。ワクチンが定期接種化する前は、大人になって自分の子どもなどが水ぼうそうにかかった際、“再び薄くウイルスに感染”することで、自身が持つ「水ぼうそうに対する免疫」がパワーアップしていました。
しかし2014年以降、子どものワクチン定期接種が導入されると、水ぼうそうに感染する子どもが一気に減ったのです。そうなると、大人がウイルスに薄く暴露する機会が減るため、免疫のパワーアップがされず、帯状ほう疹を発症する大人が増えたのではないか、と推測されています。
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