福井市で1986年、当時、中学3年の女子生徒が殺害された事件で、服役した男性が求めた2回目の再審・裁判のやり直しについて、裁判所が認める決定を出しました。
再審が認められた前川彰司さん
「恵みの中でこの38年間、過ごしたかなというふうに思っているので、とりあえず良かった。浮かれるわけにはいかないということは自分で戒めたい」
事件は1986年3月、福井市の市営団地で発生、留守番をしていた中学3年の女子生徒が包丁でめった刺しにされ、死亡しました。
名古屋高裁金沢支部は、関係者らの証言が「大筋で一致している」として、前川彰司さん(59)が懲役7年の判決を受けました。
物的な証拠がなく、捜査段階から無実を主張していた前川さんは、出所後の2004年に再審を請求。一旦は認められたものの、検察の申し立てにより、取り消された経緯があります。
2回目となる再審請求で弁護団は検察から287点の証拠開示を受け、捜査報告書などを新たな証拠としました。
この中で、「血の付いた前川さんを見た」と話した男性が直前に見ていたとするテレビ番組が、実際は事件の翌週に放送されていた矛盾を警察が認知していたことが分かりました。
さらに男性は「自身の犯罪を見逃す見返りに前川さんの関与を認めるよう求められ、うその証言をした」と明らかにしました。
名古屋高裁金沢支部の山田耕司裁判長はきょう、「ありもしない体験を述べる供述が警察官の誘導で作られたことが認められる。新証拠は、無罪を言い渡すべき明らかな証拠」として、再審開始を認める判断を示しました。
再審が認められた前川彰司さん
「先日、袴田さんに無罪が出まして、再審に際して新しい風が吹き始めている。その再審の風をより後押しすることになるのではないかと僕は期待している」
事件から38年。司法の在り方が改めて問われています。
今月、無罪が確定した袴田さんは1966年に逮捕され、58年間、犯人扱いされてきました。静岡地裁での死刑判決から半世紀近くにわたり、死刑執行の恐怖におびえながら獄中生活を過ごし、いまも拘禁症状が残っています。
1981年から再審を求め、ようやく認められたのは33年後の2014年でした。
袴田巖さん
「みなさんが、どれだけのご意見を持つのか。改革は完全に正しく行うつもりでございます」
その後、検察の抗告などがあり、実際に再審・やり直しの裁判が始まったのは、そこからさらに9年後の去年10月でした。
現在の再審法では、検察側の証拠開示について規定がなく、裁判所の再審開始の決定までに時間がかかることが指摘されていて、国会でも超党派の議員が法改正を求めています。
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