関東で相次ぐ強盗事件。逮捕された一人が「家族に危害が加えられるかもしれないと考えると断れなかった」と供述するなど、容疑者たちが「闇バイト」から抜け出せなくなり、犯行に及んでいった過程が見えてきました。

■強盗の手口から見える“犯人像”

南波雅俊キャスター:
10月17日、千葉・市川市の50代の住人が暴行を受けて一時行方不明になり、軽乗用車なども奪われました。

強盗傷害などの疑いで高梨謙吾容疑者(21)、女性を監禁した疑いで藤井柊容疑者(26)が逮捕されています。

犯行現場は、目線の高さほどの「出窓」が大きく割れている状況です。

元神奈川県警捜査一課長 鳴海達之氏によると「出窓は入りにくいので“常習犯”は侵入口には選ばない。ガラスを大胆に割れば、音で気づかれたりケガをした際に血痕で特定されやすい。素人の稚拙な手口」だということです。

元神奈川県警 捜査一課長 鳴海達之さん:
出窓は踏み台がないと鍵の部分に手が届かない場合は多いので、常習的な泥棒がやる場合は、出窓のような高い窓ではなく掃きだし窓を狙うというのが一般的です。

割れた窓ガラスに皮膚に当たると血液が出て、血液からDNAが分かり、個人が特定されるという流れになりますから、まず狙うことはありません。

ホラン千秋キャスター:
そういうことすら知らない、素人たちによる犯行だろうと読み取れるわけですね。

井上貴博キャスター:
証拠品も残していますし、指示役のマニュアルも稚拙すぎる印象です。

元神奈川県警 捜査一課長 鳴海さん:
ただ、この指示役にとって実行役たちは使い捨てなので、捕まっても構わないし全く問題ないのだと思います。とにかくどんな方法でも、中に入って金を持ってくれば、ということでしょう。

実行役が捕まっても自分たちが捕まらないように、秘匿性の高いアプリを使っているわけです。

実行役が住宅に入る前から指示役と電話を繋ぎっぱなしにしていて、だれか1人が必ず喋る、そして、現場のやり取りを聞きながら、指示役は指示を出すというパターンです。

ホランキャスター:
今はわかっていませんが、指示役が1つのグループとも限らないですよね?ずさんかつ稚拙な手口で良いということであれば、簡単に真似できる構図になっているように感じます。

元神奈川県警 捜査一課長 鳴海さん:
元々1つだった特殊詐欺グループが、電話で詐欺をするのが面倒になり、タンス預金・お金がありそうな家に行って、強盗をし始めたことが最初です。

ノウハウを覚えた幹部がグループから出て、自分のためのグループを作っていくという流れを作っています。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
こういった事件は、やはり情報戦だと思います。振り込め詐欺でも、知識不足で振り込んでしまうということがありました。

今回の件も、「闇バイトです」と書いているわけではないので、ついつい応募してしまうのかもしれません。放送などを通じて、情報・知識を流すべきだと思います。

例えば、家族構成を聞かれたり、秘匿性の高いアプリ「テレグラム」や「シグナル」を使っていると聞いたら、「何かおかしい」と気づけるような知識が大事なのではないでしょうか。

■コスパ良いバイトに応募し…「気づいたら強盗に関与」

南波キャスター:
強盗傷害の疑いで逮捕された高梨謙吾容疑者(21)は事件翌日に自ら出頭しています。

捜査関係者によると、高梨容疑者は「闇バイトに応募をして、強盗に加担したが嫌になった」と話しているということです。

10月15日ごろに発生した、横浜市青葉区の強盗殺人事件の実行役として逮捕されている宝田真月容疑者(22)は、短期間で稼げるアルバイトを探し、SNSで「ホワイト案件」という投稿を発見し、指示役と繋がったとみられています。警察への取材によると「個人情報を知られ、仕返し・家族への危害を考えて断れなかった」と話しているということです。

9月18日のさいたま市での強盗傷害事件で、逮捕された4人のうちの1人が、「ドライバーの仕事・ホワイト案件」といったSNSの募集を見つけて応募。捜査関係者への取材によると「気づいたら強盗に関与。身分証明書の画像を送ってしまい引き返せなかった」と話しているといいます。

闇バイトは、SNSなどでの募集が多く、「高額報酬」「業務内容が不明確」「資格・経験不問」といった条件で、「ホワイト案件」「誰でもできる簡単な仕事」「リスク無し」「学生可能」「詳しくはDMで」などの誘い文句があるということです。

身分証明書や顔写真、家族構成などの情報を送るように指示される事例も非常に多く、引き返せないという声もあるようです。

■家族構成・間取り どこまで把握し、狙っている?

井上キャスター:
犯行グループ側には「闇名簿」があって住宅を物色していくといわれていて、不動産関連会社から家族構成や間取りなどの情報が流れているという情報もあります。どこまで把握しているのでしょうか?

元神奈川県警 捜査一課長 鳴海さん:
そんなに詳しくはないと思います。

例えば、ネット通販で高額商品をよく買っている家とか、ネットで旅行の申し込みをして、よく行っているからお金があるのではないかなどの見込みでやっていると思います。

ホランキャスター:
犯罪に加担すると知らずに呼び出されているのに誰かに危害えてしまうというのは、恐怖と天秤にかけて、「やるしかない」と思ってしまう人間の心理をうまく利用していますね。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
それでも、人を殺してしまうとか危害を加えるところまでいくのかとまだ納得できないところです。

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<プロフィール>
鳴海達之さん
元神奈川県警捜査一課長
組織犯罪対策本部長や川崎警察署長を歴任

ハロルド・ジョージ・メイさん
日本コカ・コーラ副社長やタカラトミー社長などを歴任
現在パナソニック社外取締役 アース製薬社外取締役など

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