今の日本では、夫婦は結婚後に同じ苗字を名乗ることになっていますが、ジュネーブにある国連の委員会で、こうした日本のあり方が改めて問われました。
夫婦同姓により、ビジネス上の手続きで不便も?
そもそも日本が問われている「夫婦同姓」とは、どのような制度なのでしょうか。
たとえば佐藤さんと鈴木さんが結婚した場合、現在の日本の法律では、どちらかが戸籍上の姓を変える必要があります。現状、95%は女性が“改姓”しています。
実はこうした夫婦同姓が義務付けられているのは、法務省が把握する限り、日本だけだといいます。
これに対し、世界の国々で一般的なのは「選択的夫婦別姓」です。佐藤さんと鈴木さんが結婚した場合、どちらかが姓を変えて2人とも佐藤もしくは鈴木になるか、それとも、どちらも変えず佐藤と鈴木のままでいるのかを選べる制度です。
“家族の一体感”を重視し、夫婦同姓を支持する世論もありますが、経団連はいわゆる“女性活躍”のためにも、選択的夫婦別姓の導入を求めています。
たとえば結婚して戸籍上の姓を鈴木から佐藤に変えた女性も、仕事では“通称”として旧姓の鈴木を使うことが多いのですが、戸籍上の姓に基づいて作る銀行口座やクレジットカードの名義は佐藤となります。これが通称の鈴木と一致しないことで、ビジネス上の手続きで不便が生じることがあるというのです。
夫婦同姓→選択的夫婦別姓に改めた国もあるなか、日本は勧告に従わず
では、世界はどう変わってきたのでしょうか。
ドイツ、スイス、オーストリアなども、かつては夫婦同姓を義務付けていましたが、これを次々と改めて選択的夫婦別姓を導入してきました。
この潮流を作ったのが、1979年にできた「女性差別撤廃条約」です。“世界の女性の憲法”とも呼ばれ、日本も1985年になって批准しました。
この条約を履行しているかどうかを、国連の「女性差別撤廃委員会」が審査します。夫婦同姓を義務付ける日本の法律については、「実際には女性に夫の姓を強制している」として、20年以上前から過去3度にわたって是正勧告してきました。しかし日本は、これに従ってこなかったのです。
国際人権法を専門とする青山学院大学の谷口洋幸教授は「日本政府は女性差別撤廃条約をあまりに軽視している。国際社会からは夫婦同姓の制度に日本の人権意識の低さが表れていると見られている」と指摘します。
前回の勧告では法改正した実績も…次回の勧告で選択的夫婦別姓の導入なるか
女性差別撤廃委員会からの勧告は、“同姓の強制”の問題だけではありません。日本でも、これまでに勧告を受けて法律を改正してきた前例もあります。
たとえば前回2016年には、結婚年齢を定めた家族法が男女間で差があること(男性18歳・女性16歳)が“差別的”だとして、是正するよう勧告を受けました。これにより、男女ともに18歳とする法改正が行われました。
また、夫婦が離婚した際、女性のみに100日間の再婚禁止期間が定められていたことについても、同様に勧告を受けて廃止しています。
選択的夫婦別姓を導入するよう、4回目となる勧告を受ける見通しの日本。20年以上もがっちりとかけられた鍵は、今回開かれるのでしょうか。
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