重度の知的障害がある涼太さん(27)。普段は穏やかな生活を送っているが、それが一変する時がある。突然、「パニック」を起こすのだ。そんな息子に付きっきりで世話をする母親の和美さん(51)は、老いていく自分と、涼太さんの将来を不安に思い、受け入れ施設を探している。しかし、取材を進めると『施設も限界』の現状が見えてきた。

突然起こるパニック…「強度行動障害」とは

 長野県に住む蒲和美さん(51)と27歳の息子・涼太さん。涼太さんには重度の知的障害がある。普段は自宅で穏やかな生活を送っているが、それが一変する時がある。涼太さんが突然、「パニック」を起こすのだ。

 壁や床に何度も自分の頭を叩き付ける。こうしたパニックを起こすのは涼太さんが知的障害に加え、「強度行動障害」もあるからだ。

 強度行動障害とは自分や他人を傷つけたり物を壊したりするなどの行動が高い頻度で起こる状態を指す。生まれつきの障害ではなく、周りの環境などへのストレスや不安によって生じる。

 (母・和美さん)「1分弱、何十秒で収まるときもあれば、1時間半とかひたすらやっているときもありますね。抑えても抑えてももう止まらない、また始まるみたいな。私は抱きかかえるように止めるんですけど、そうするとこの辺に頭がくるのでゴンゴンして、あざになったり」

涼太さんの引き金は「時間へのこだわり」

 パニックが起こるきっかけは、涼太さんの場合「時間への強いこだわり」が関係している。

 (涼太さん)「お風呂」
 (母・和美さん)「はい、お風呂どうぞ」

 (母・和美さん)「お風呂入るのが午後5時までには、最近は午後5時までに上がらないとダメみたいな感じで」

 リビングには涼太さんの一日の予定が書かれたホワイトボードがある。こうした予定が少しでも狂うと、その後の行動の見通しが立たなくなる不安からパニックを起こすのだという。一日中、目を配らなければならず、家族の生活は常に涼太さん中心だ。

「老障介護」の不安…

 和美さんはいま、夫の竜也さん(46)と将来について頭を悩ませている。高齢になった親が障害のある子を介護する、いわゆる「老障介護」になる不安だ。

 (母・和美さん)「私ももう50歳を過ぎているので、この先あと何年くらい面倒をみられるんだろうという不安もあるし、私も体調が悪いことが今現在でもあるので、例えば私が今倒れたら誰も見る人がいないんですよ。涼太のこと」

 そのため、涼太さんが新しい環境に慣れることができる若いうちに、家を出て暮らせる「施設」を探している。

施設探し、5年で40か所以上見学したが…

 しかし、探し始めて5年、40か所以上見学に行ったというが、涼太さんが入所できる施設は見つかっていない。一体、なぜなのか?障がい者の入所施設を取材すると、強度行動障害のある人の受け入れが難しい「現実」が見えてきた。

 大阪府岸和田市にある障がい者の入所施設・山直ホーム。40人いる入所者のほとんどに最重度の知的障害と強度行動障害があるが、48人の職員がシフト制で24時間、寄り添った支援を続け、みな、穏やかに生活を送っている。

 しかし、この施設への入所待ちは現在130人にのぼり、受け入れてもらうのはかなり難しい。

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