元日の地震に加え、先月の記録的な豪雨でも大きな被害を受けた石川県輪島市の門前町では今、地元の女性たちが地域住民の心の拠り所となる場所を作ろうと奔走しています。被災地で新たに産声を上げた地域コミュニティを追いました。

住民が集まって話せる場を 笑hahaとうげ組始動

輪島市門前町の道下集会所。今月6日、地域の住民を対象にした茶会が開かれ、およそ40人が参加しました。


柴田寿美香さん
「震災があって水害があって。みなさんの気持ちをここで一緒に話してもらえたら嬉しいなと思ってこういう会を開いた」



イベントを企画したのは、今年7月に道下地区に住む女性たちで発足したグループ「笑hahaとうげ組」です。

柴田寿美香さん
「みんなで集まって話をするのが必要なんじゃないかなって。やっぱり1人で考えるより、こういう場を設けてみんなで楽しく話すのが良いって聞いたので」

柴田さんはこの地区の避難所で元日から半年間、炊き出しの責任者を務めていました。この炊き出しを通じて、避難所は多くの住民にとって憩いの場になっていたといいます。


避難所生活の中で生まれた地域の繋がりを絶やさないようにと、中心に立ってとうげ組の活動を始めました。

柴田寿美香さん
「なるべく皆さんが集まれる場所、話ができる場所を手探りだけど探してみんなでしていきたいなって」

避難所閉鎖から3か月 顔を合わせなくなった住民も

避難所の閉鎖から3か月。

誰もが集まれる場所がなくなったことで、仮設に移った人たちと、元々の家で暮らす人たちとで顔を合わせる機会は減っていました。


柴田さん
「こういう仮設住宅には来にくいという人もいる。全然会えていないのが現状」

再び、地域のみんなが集まれる居場所を。

先月14日、とうげ組が訪れたのは2004年に起きた中越地震の被災地。
当時5人が亡くなり、673棟の住宅に被害が及んだ新潟県の旧山古志村で、今後の活動のヒントを探りました。

中越地震の被災地で能登へのメッセージ「遠くから応援しています」

やまこし復興交流館おらたる。中越地震のあとにできた山古志村の住民の経験を伝える施設には、今年被災した能登を思いやるメッセージがありました。

「きっとまた復興させましょう」「同じ北陸同士、震災経験したもの同士、くじけず頑張りましょう!!遠くから応援しています」

メッセージボードに並ぶ応援の言葉。温かい言葉の数々にとうげ組のメンバーの目には涙が浮かんでいました。

山古志村にはとうげ組と同じように、地震のあと地元の女性たちが力を合わせて、立ち上がったケースもあります。

地元のレストラン「山古志ごっつぉ多菜田」もそのひとつです。

山古志ごっつぉ多菜田 五十嵐なつ子さん
「こんなに全国の人たちに支援をしてもらって、これだけ嬉しかったことはないと。この地区にあった一軒の食堂もなくなったし、ここにおいでになる方の休める場私らがを作るのが一番いいんじゃないかと」

災害から立ち直り、自分たちのできることを進めてきたという店主の五十嵐なつ子さん。その力強い言葉が、とうげ組の背中を押してくれました。


柴田さん
「同じような感じで行けるかなというのが垣間見えたので、なんかすごく私たちにも似たようなことができるんじゃないかなって」

閉塞感を打ち明けられる場を 茶会でこぼす本音

今月6日に開かれた茶会には、地元の女性たちが続々と集まりました。

ハロウィンの衣装で少しでも明るくと始まったこの茶会は、先月の記録的な大雨を受けて急遽開催が決まったものです。住民たちは、自らの被災状況などを話し合っていました。

参加した住民
「野菜があったところに水がバーッといったからダメ。しょうがない」
「地震の後、ボランティアの人が何回も避難所から仮設住宅から来てくれて感謝」


河川の氾濫や、住宅への浸水などの被害が相次いだ門前町。多くの住民が胸の内にある閉塞感を打ち明けられる場を求めていました。

参加した住民
「自然豊かな能登をこれ以上いじめてほしくないです。ちょっと立ち直ったかなと思ったあとにこれやられた、ちょっと折れるよね」
「心折れていたけど、ちょっとでもこうやって笑ってみんなと会話出来て楽しいなと思う」

顔なじみ同士、笑顔で会話を楽しむ参加者たち。一方で、イベントのアンケートには日々の孤独を打ち明ける住民もいました。

「1人でいるので淋しい」

茶会の終了間際、参加した住民から柴田さんに体を気遣うメモ紙が手渡されました。

柴田さん
「繋がっているなって、避難所でみんなで過ごして話をしたのが今につながっているんだなと嬉しかった」


一方で、笑hahaとうげ組のメンバーの1人は、来たる正月に地震で被災した住民たちの気持ちがまた落ち込んでしまうのではないかと不安を吐露します。

震災から10か月が経ち、あの元日からもうすぐ1年です。

苦しい時に住民同士で支えあって乗り切っていく。地域住民が気軽に集まって会話ができる憩いの場を、笑hahaとうげ組は目指します。

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