16日未明、千葉県白井市の住宅で、男とみられる数人が住宅に押し入り、就寝中の70代・40代の女性の手を縛り暴行を加えました。現金約20万円を奪って逃走したということです。
■「これまで強盗犯は郊外の一軒家を狙うことが多かったが、今は…」
熊崎風斗キャスター:
そして、まだ詳しいことはわかっていないものの、横浜市青葉区では午前9時半ごろ「玄関ドアの横の窓が昨日から開いたままになっている」と110番通報がありました。部屋で高齢とみられる男性が倒れているのが見つかり、その場で死亡が確認されました。体には暴行の痕があり、手足が縛られた状態だったということで、警察は殺人事件とみて捜査をしています。
井上貴博キャスター:
横浜では高齢の男性が、千葉では女性2人が被害者という卑劣な犯行ですが、家族状況を把握したうえで押し入ったと考えるのが自然なのでしょうか。
元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
千葉の事件はそうだと思いますが、横浜の事件はまだ情報が少ないので、どちらで判断されるのか、あまり適当なことは言えないと思っています。
ただ、手足を縛られた状態だったということなので、単純に殺人だけの目的であればそこまでしなくてもよさそうです。何らかの恨みがあったのか、もしくは現場で何かしたかったのかという、犯行側の意図があるのではないでしょうか。
熊崎キャスター:
この数か月、緊縛強盗は首都圏で相次いでいるということが特徴としていえます。なぜ首都圏なのでしょうか。
稲村さんは「これまで強盗犯は郊外の一軒家を狙うことが多かったが、今は指示役からの指示で犯行が行われるので、実行役は捨て駒。リスクがあってもすぐにお金が手に入りやすい首都圏にシフトしているのでは」とみています。
ホラン千秋キャスター:
さまざまな住宅があるなかで、どういう住宅が狙われやすいかという特徴は何かあるのでしょうか。
元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
そこはまさに論点の一つです。なぜ郊外から首都圏にシフトしているのかというところには、やはり名簿の存在があるのではないかと思っています。
首都圏を狙っているわけではなく、名簿に基づいてターゲットを狙っているとしたら、その名簿が単純に今回は首都圏だったという可能性もありそうです。
ホランキャスター:
犯罪組織が所有している名簿には、どのようなことが載っているのでしょうか。
元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
おそらく“闇名簿”といって、よく報道されてきましたが、載っているのは家族構成や資産、収入などでしょうか。あとは、住人の性格まで書かれたリストもあるので、そういったものに基づいて犯行をしている可能性はあると思います。
■これまでの防犯対策は通用せず? “5分の時間稼ぎ”が重要
熊崎キャスター:
こうなると非常に怖いので、対策をしていきたいと考えている方も多いかもしれません。
しかし稲村さんいわく、通用していた対策が通じないこともあるといいます。というのも、これまでは▼錠を2つ以上設置したり、▼防犯ステッカーを貼ったり、誰かが来たら反応する▼センサーライトや防犯カメラを設置したりといった対策が主流とされてきました。
ただ、稲村さんは「狙った家に手段を選ばず侵入するため、対策が抑止につながらないことが多くなっている」と指摘します。今は、大胆にガラスを割って入ってくるようなことが増えているそうです。
では、代わりにどのような対策が必要になってくるのかというと、“犯人が侵入するまでに5分かかる防犯対策”がポイントだと稲村さんは話します。▼防犯ガラスを設置したり、▼外出時はシャッターを閉めたりするなど、5分という時間をどれだけ稼げるかが大事だということです。
井上キャスター:
今回の一連の事件で逮捕された容疑者が「やらなければ殺される」と供述しているように、全員が捨て駒になっていますよね。捕まることをまったく恐れていないとなると、もう対策のしようがないというか、防犯カメラで映像が映っても「どうぞ逮捕してください」ということになってしまうのでしょうか。
元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
そのとおりです。過去にも銀座の宝石店で強盗がありましたが、それもまさに防犯カメラに映っても構わない、見られても構わないという状況でした。
防犯カメラの映像は捜査の面では非常に有効ですが、実行役が脅されているとしたら、抑止としては働きづらいのではないかと思います。
井上キャスター:
防犯ガラスは有効と考えてよいのでしょうか。
元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
そうですね。防犯の考え方では、狙われる対象物の強化という概念があります。
たとえば、お金を守りたいならお金を守るのではなく、お金を取り巻く環境を強化しなければいけないということです。そうするとフィジカル的にシャッターを閉めたり、ガラスを打ち破られないようにしたりと、侵入させない家にするということが重要ではないかと思います。
ホランキャスター:
防犯ガラスなどは結構お金がかかる部分もあると思いますし、全部変えることができないとなると、他にできうる対策には何があるのでしょうか。
元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
基本的に防犯の考え方としては音と光、あとは周囲や地域の目というものがあります。
音と光というのは、たとえばブザーを鳴らすセンサーライトなどです。さらに、近所やコミュニティと連携を深め、不審情報をお互いに共有することが非常に重要だと思っています。
井上キャスター:
防犯ガラスの存在は、先ほど話に出た名簿などには載らないのでしょうか。それで抑止になるのか、はたまた、犯行したときに「これは防犯ガラスだ」と気付いてやめるのか…。
元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
そこは一概に、これだという一つのパターンではないと思っています。当然下見もするでしょうし、Googleマップで見られるものもあるでしょう。
そういった意味では、犯行の成功率を上げるのであれば下見をするでしょうが、下見をしないで実行犯がそのまま突入させられるパターンもあるのではないかと思います。
ホランキャスター:
そもそも、名簿に載らないようにする方法はあるのでしょうか。
元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
基本的には、公的機関やメーカーを名乗った者が来ても、不在時は答えないことです。
逆の考えがあり、私の実家に先日電話があったのですが、「この日は在宅していますか」と尋ねてきました。不審に思ってメーカーに問い合わせたら、メーカーではそういうことをやっていないというので、おそらく電話の主は、在宅時を狙って何かしたかったのだろうと思っています。
井上キャスター:
そうするともう、固定電話も基本的には取らなかったり、留守番電話にしておいたりするのがよいのでしょうか。
元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
特殊詐欺と同じ考え方で、留守番電話にしておくこともアリだと思いますが、なかなか日常生活でそれをすべてやってしまうのは難しいところもあります。
一つは、自分の情報を簡単には出さないことです。また、不審な点があれば大元に電話をかけ直し、電話の主から言われた番号にはかけ直さないでください。犯罪グループが自分たちの番号を言ってくる場合もあるので、そこまで厳重に警戒しなければいけないと思います。
■強盗被害にあわないためには「まずは疑う」 地域での努力も必要
熊崎キャスター:
まさに名簿の話につながるところだと思いますが、千葉県白井市の事件では、周辺でこんな声があったそうです。
●「買取業者から1週間前に電話がかかってきて、断ったら『なんで断るんですか?』と言われた」
●「0120からはじまる電話が何度もかかってくる」
つまり、名簿と何か関係があるのかもしれません。やはり、そういったときに自宅の情報を教えないようにしたり、地域で侵入させない努力をしたりと、全体でやっていくしかないのではないでしょうか。
稲村さんは「色々な方法で情報を得ようとしてくるので、『まずは疑う』ことが重要」だとしています。
元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
犯罪グループは実際に訪問してきて、特定のメーカーを装った名刺を持っていたり、ネームプレートをかけていたりなど、そこまで手の込んだことをやってきます。そういったところも念頭に入れて、自分たちの想定以上のことをやってくるという意識を持ち続けなければいけないと思います。
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<プロフィール>
稲村悠さん
元警視庁公安部捜査官 危機管理コンサルタント
多くの諜報活動の取り締まりや情報収集に従事
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