長崎港には連日クルーズ船が入り、コロナ禍前のように外国人観光客の姿が多くみられるようになりました。そんな中、外国人に人気だという宿が長崎市にあります。どんな宿なのか取材しました。

最近、長崎市内で《和のテイスト》を取り入れた宿を見かけるようになりました。「おやど紀伊国屋(きのくにや)」は《民泊宿》です。民泊はホテルや旅館とは異なり、住宅やマンションなどの一室を活用して宿泊サービスを提供します。

「おやど紀伊国屋」は2019年にオープン。長崎市の古い住宅やマンションの一室などをリノベーションし、わずか5年間で市内中心部に13か所まで拡大しました。宿泊者の約半数は外国人で「日本の文化を感じられる」として人気です。

外国人:

「(長崎の街は)歴史ありそう。そんな空気がある」

「(長崎の街は)ヨーロッパとは大きく違う美しさがある」

この宿の仕掛人が坪田洋一郎さん(61)です。
古い街並みが今も残る「長崎くんち(=長崎市の秋祭り)」の踊町(おどりちょう)で生まれ育ちました。

坪田さん:
「元々最初のこだわりが、踊町全てに(宿を)作りたいという思いがありまして」

外国人観光客がマンションに入っていく!?

坪田さんの本業は自動車販売ですが、「おやど紀伊国屋」のビジネスモデルは10年ほど前に大阪で目にした光景がヒントになりました。

坪田さん:
「(大阪の)難波に事業所があって、そこで打ち合わせがあるんですけど、皆さんがキャリーバッグを持って“マンション”に入っていくんですね。それが実は《民泊》ということを知りまして、この流れは長崎にも必ずやってくると」

長崎では大型クルーズ船の入港で約10年前から外国人観光客が増加。コロナ禍で船の寄港は一時、途絶えていましたが、2023年3月から再開され、外国人の姿が戻ってきました。

長崎も“インバウンドの時代”だと直感して《民泊事業》を始め、5年前に長崎市の踊町のひとつ、銀屋町に最初の宿(1号店)をオープンさせました。

坪田さんたちの“ビジネスモデル”は《空き家》などを宿泊できるようリノベーションして《民泊》として運用。収益を所有者と分け合うものです。

坪田さん:
「(リノベーションの際のイメージは)和モダンですね。障子を使ったり畳を使って。意外とヨーロッパの方々も湯船にお湯を張って入られるという方が多く、すごく喜ばれるんです。そういったノウハウも宿泊した方々からいただいて、次々に展開しています」

昭和の雰囲気や古い町屋の面影を残す建物をリノベーションした宿は「日本の文化や伝統に触れられること」が外国人の心をくすぐり、その数を増やしていきました。

Q.なぜ「おやど紀伊国屋」を選んだ?

宿泊者(アメリカから):
「(写真を見て)内装がキレイな感じがしたし、洗濯が必要だったから洗濯機があることは重要だった。(泊まってみて)とても快適だった」

《民泊》は本来、住宅やマンションということもあり、電化製品やキッチンなど、生活に必要な設備はほぼ揃っています。

安さで勝負!住宅を貸す《=民泊》の利点

さらに“料金の安さ”も人気の理由の一つです。中通りに近い《ビル内の一室》はやや狭く、内装をシンプルにすることによって、時期にもよりますが、一人あたり3千円で宿泊できるようリノベーションしました。

坪田さんの民泊プロジェクトチームのメンバー、染浦寿昭さん(39)は《デザイン》や《施工管理》などを行う会社を経営し、部屋のリノベーションを担っています。

染浦さん:
「(この宿は)極力、低予算で(リノベーションする)という形なんですけど、少しでもいつもと違う空間を味わってもらうために、ちょっと奇抜な色合いを選んでます」

《部屋の装飾》や《運営》を行っているのが、賃貸住宅の管理などを行っている不動産管理会社「ハウジングロビー」です。

「おやど紀伊国屋」は国際的な大手の旅行サイトなどからオンラインで予約を受け付けます。民泊施設なのでフロントなどはなく、利用客は施設の入り口でセルフチェックインします。デジタル化・多言語化され、全て非対面です。

ハウジングロビー 鹿山 真由美さん:
「非対面ですので、お客様(のスマートフォンなど)にチェックイン方法をお伝えしないといけないので、そのためのシステムです」

利用者へのセルフチェックインの案内や、チェックイン情報などは「ハウジングロビー」の事務所内で一括管理できるシステムを構築。外国人スタッフもおり、外国語での問い合わせなどにも対応します。

宿が街の姿や通りの雰囲気も変えた

長崎市の中通り商店街に4年前にオープンした複合型商業施設「めがね橋LOGIC(ロジック)」も坪田さんがプロデュースしました。隣接する民家や空き店舗などを改装し、それぞれの建物を細い路地で行き来することができます。

坪田さん:
「長崎の町屋(のイメージ)。ドーナツ屋さんがあったり、占いの店があったり。路地を歩くで《ロジック》ということですね」

昭和レトロなこの複合施設にも、宿泊できる「おやど紀伊国屋」が3部屋、備えられています。

”日本文化の体感”や”利便性の良さ”などの付加価値を持つ「おやど紀伊国屋」
今後、この取り組みが広がり長崎にインバウンドが増えることで地方創生にも繋がることが期待されています。

坪田さん:
「私も生まれ育って長崎が大好きなので、どうかこの長崎にいろんな方々を呼びしてですね。頑張っていきたいなと思っております」

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