徳島県の山奥に入学希望者が殺到している学校があります。全寮制で学費は実質0円。各界のトップランナーから直接学び、15歳から“起業家を目指す”学校とは?

学費“実質0円”で寮費にも奨学金

徳島県の中部に位置する神山町。人口約5000人、町の8割が山林という里山に、2023年に開校したのが「神山まるごと高専」です。

この高等専門学校に今、全国から入学希望者が殺到!倍率は10倍超えです。

「北海道の函館から来ました」(2年生女子)
「大阪から。一人で来ることに抵抗はあったけど、やっぱり行きたいという思いがあって」(1年生男子)

1学年1クラス制(約40人)。今はまだ2年生までしかいませんが、全国から集まった学生が「OFFICE(オフィス)」と呼ぶ校舎で5年間学び、「HOME(ホーム」と呼ぶ寮でひとり暮らしです。

2年生女子:
「中学校までやりたいこともできることもなかったので、普通の高校だと中学校の延長になってしまいそうで、その時にここを見つけて。学生のうちに起業できたらなって今は思ってます」

学生のうちに起業!?
そう、神山まるごと高専のミッションは、「モノをつくる力で、コトを起こす」人材を育てること。起業は「特別な才能を持つ人だけがする特別なこと」ではなく、もっと広く色んな人たちができると15歳から教えているのです。

『神山まるごと高専』事務局長 松坂孝紀さん:
「全員が起業するかどうかは別として、起業という選択肢が自分の人生にとって取れる選択肢なんだと思ってほしい」

入試も少し変わっています。一般的な数学や国語などのテスト以外に、「動画で自己PR」なんていうものも。学力よりアイデアをみるテストを重視しているのです。

そして経済的負担を減らすため、ソニーやソフトバンクなどの大手企業の協賛で“学費実質0円”になる奨学金を設立。希望者全員が使えます。

また寮費も、世帯収入により最大100万円の奨学金が支給され“実質0円”になるケースもあるといいます。

授業も部活も“異例”だらけ

授業は英語、数学など一般的な科目もありながら、かなり実践的な授業も。この日、1年生男子の松尾怜旺さんがひざを突き合わせて話していた相手は星野リゾートの星野佳路代表です。

松尾さん(1年生):
「直接問題を解決するビジネスがあるじゃないですか」

星野代表:
「社会の問題ってこと?」

松尾さん(1年生):
「そうです」

星野代表:
「社会問題をビジネスで解決しようというのは、本当は一番最初に来る目的ではないというのが僕の考え方ですね」

週1回の特別授業では、各界のトップランナーから直接“起業家精神”を教わったり、企業と提携して実際に進捗中のプロジェクトに参加したりする授業もあるんです。

校舎を「OFFICE」と呼ぶのも、社会人としての認識を育てるため。校則も一切なし。これは「自由にともなう責任や自主性」を育てるためです。部活も学生自身が企画してゼロから立ち上げます。

例えば、季節野菜やお米を作る部活「まるごとファームクラブ」も、“農具ありませんか”と呼びかけるチラシを町に貼ることから始めたといいますが、今では獲れた作物を学校給食に提供するほどに。

10月の文化祭にむけてギターを練習していたのは1年生男子のセナさん。17万円のギターを、月3000円払いの4年ローンを自分で組んで購入したといいます。

セナさん(1年生):
「他の学校って学力とか成績とかそういうの見てるじゃないすか。でも神山は自分のやりたいことを資料として提出して、僕1人として選んでくれてるのでここを選びました」

本当に高校生?大人顔負けの実践授業

英語だけで行う授業もあります。インターネットで資金を集めるクラウドファンディングについてのディスカッション。

1年生男子:
「I think…many people’s… support」

1年生なので英語は中学レベルの学生がほとんどですが、とにかく話して伝える姿勢が上達にもビジネスにも大事なんです。

さらに今、最も成功のカギとなるスキルも学びます。

『神山まるごと高専』松坂さん:
「新しいものが次々と生まれてくる時代だからこそ何が必要なのかと考えると、次にデザインだと」

「デザイン」の力。みなさんも、ぱっと見た印象で商品がほしくなったり、ホームページがしっかりしていたら信頼したりしませんか?

そのデザイン力を磨く授業では、学校の近所にあるコーヒーショップのポスターを作製。

1年生が作った水出しアイスコーヒーのポスターは、店の人も「完成度に驚いた」という作品で、実際に店に貼ると「売り上げが去年の3倍になった」のだとか。

2年生が取り組んでいるのは、大阪・関西万博の徳島パビリオンのブース。「空間ディレクション」の役割で、コンセプトや、来場者に届ける体験性などを出展する企業と一緒に考えているといいます。

菊井福音さん(2年生):
「物を陳列する什器をどういう形にしようとか、徳島といえば渦だから、人の動きも渦みたいに動いたら面白いよね、みたいな感じで」

「地産地食」の給食

そして、平日3食用意される給食にもこだわりが。

学生たちが「おいしい!」と絶賛する給食は、地元産の野菜や肉などをふんだんに使った定食やカレーやパスタなど「地産地食」の日替わりメニュー。地産率80%(※全国平均56%)で、地元農家の支援にもなっているんです。

食堂で女子トークに花を咲かせていたのは2年生女子。時には「放課後にプリクラ撮ってスターバックスに行きたい」と思うこともあるといいますが…。

2年生女子:
「田舎すぎて寄り道するところがない。そのかわり、この間放課後に一回寮に帰ってコンビニに行った後、川で遊びました。お金かからない(笑)」

特別じゃない、10代の学生たち。みんなが入学当初から起業を目指していたわけではありません。

菊井さん(2年生):
「OLになるということに、そこまで憧れがなかった。自分で新しいことを起こして何か活躍できる人になれたらめっちゃかっこいいなと思ったのがきっかけかも知れない。多分親もすごく不安だっただろうけど、全力で応援してくれるので、今ここで楽しく過ごせている。本当にありがたい存在」

学生たちの姿にスタジオ驚嘆

まだ15歳、16歳ながらも志が高い学生の姿に、櫻坂46の松田里奈さんは「スゴい」と驚嘆。「日本の未来は明るいなとすごく思ったし、こういった高校が増えたらいい」と話した。

また、江藤愛アナは学生たちの言葉に注目。話す内容に「自分はこうだ」としっかり意見があるとし、今後どう羽ばたいていくのか楽しみと目を細めた。

(THE TIME,2024年10月10日放送より)

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