障がいのある人の表現をテーマにした特集「アート・ミーツ・ハート」です。アートをきっかけに不登校から脱け出し、独自の表現世界を広げている富山県高岡市のアーティストに注目します。
大胆なストロークで描き出されるダイナミックでポップな作品…。
線を重ねて重ねて不思議な作品を生み出すのは、高岡市のシノタケさん(35)です。
訪れた人「絵が生きてるっていうか。作者さんの思いとか、表現したい気持ちがにじみ出ている、隠されている。なんか素晴らしいですね」
具象画でも抽象画でもない独特の作品は、ポスターのデザインにも…。
デザイナー・山口久美子さん「なかなか狙ってこんなの描けないですよね」「静かなんだけどすごい熱量を感じるというか」
シノタケさんは、高岡市の「障害者アート支援工房ココペリ」に所属するアーティストです。
ココペリ代表で高岡支援学校美術の顧問だった米田昌功さんとは20年来のつきあい…、出会いは支援学校高等部の入学検査でした。
ココペリ・米田昌功代表「昔は金八先生みたいな髪型してました」
ココペリ・米田昌功代表「不登校でまったく学校来なかったんですよ」
中学時代にひきこもりとなり、不登校は高等部入学後も続きました。
ココペリ・米田昌功代表「絵が好きだからって担任の先生に言われて、それで学校に来られるきっかけにならんだろうかって相談されて」
シノタケさんは放課後だけ学校に来て、米田さんと2人だけで絵を描くようになりました。
ココペリ・米田昌功代表「その時の頃の絵ってこんな感じなんですよ。描いたものを消して終わる、描いたものを消して終わる」「でもすごかったんですよ、その時から感覚が」
在学中に県の大規模な公募展「越中アートフェスタ」に出品し、大好きな野球を描いた作品で奨励賞を受賞しました。
ココペリ・米田昌功代表「好きなものを描けば上手に描かなくてもなんか認めてもらえるっていう所ですごい安心感があったらしくて」
記者「米田先生に出会ってどうですか?」
シノタケさん「うれしい」
シノタケさんの母「やっぱりこだわりが強すぎて、ちょっと難しいところがあるんですけど、自分でこう思ったら曲げないっていう。やっぱりなかなか自分の内面を口では言い表せないので」
自分のありのままの絵を認めてもらえたことで、学校にも通えるようになり、どんどん絵を描くことに夢中になっていったようです。
シノタケさんの母「自分でなんか本屋さん行って、先生にいつも笑われるんですけど、10分でうまくなるっていう愛読書があります」
シノタケさんは、毎日徒歩で1時間かけて自宅から福祉事業所に通っています。
自立サポートjam スタッフ・磯部円さん「夏の暑い日だろうが、雪が積もっていようが歩いて来られます」
「自立サポートjam」は、知的障がいのある人たちが織物をしたり絵を描いたりそれぞれが表現を楽しみながら1日を過ごしています。
シノタケさんは、高等部卒業後の16年前からこの事業所を利用しています。
シノタケさんの母「(Q今何を描いているんですか?)さかな」(Q全部魚ですか?)「うん」
描いているのは事業所の遠足で行ったのとじま水族館の魚。
自立サポートjam スタッフ・磯部円さん「最初A4の紙とか渡してたんですけど、もうあっという間に描き終わるし、物足りなそうだったので巻物を準備したらそれを一心不乱に描いているので、それが私たちも嬉しくて」
もう1年以上、描き続けています。
自立サポートjam スタッフ・磯部円さん「本当はもうちょっと字がわかる『天地人』もあるんです」
記者「これ本当に『天地人』ですか」
シノタケさんが書き写すと地元紙のコラムもこんな感じに。
自立サポートjam スタッフ・磯部円さん「こういう風に作ってねって言ってもまったく違うものが出来あがってくるので」
刺繍をお願いすると、こんな感じに。
自立サポートjam スタッフ・磯部円さん「独自の縫い方なので、何て言うか、作品?アート」
放課後の二人だけの美術部で開花したシノタケさんの自由な表現。
ありのままの自分でいいー。
安心できる居場所を見つけ、シノタケさんの表現のセカイはどんどん広がっていくようです。
スタッフ「緊張した?」
シノタケさん「うん」
【メモ】シノタケさんが高岡御車山祭りを描いた作品は、チューリップテレビの開局35周年記念イベント、「アートミーツハートとやま」のメインビジュアルとして使われている迫力のある素敵な1枚です。
11月9日に富山市・オーバードホール中ホールで開催される「アートミーツハートとやま」は、障がいのある人の表現をテーマにしたシンポジウムで、午前10時半からのパネルディスカッションでは、シノタケさんが所属する工房ココペリの米田さんも登壇します。
1日限定の展覧会が開かれるほか、高岡銅器・能作とシノタケさんのコラボグッズも販売される予定です。
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