5年前の台風19号災害では、地元の消防団が初期の避難や復旧作業で大きな役割を果たしました。
被災地で現場を指揮した団員が感じる課題とは?
そして子どもたちの防災意識を高めるため保護者が行っているプロジェクトを取材しました。
台風19号で大日向(おおひなた)地区の抜井川(ぬくいがわ)と隣りの余地(よじ)地区の余地川が氾濫した長野県佐久穂町。
土石流で家屋が押しつぶされ12戸が全壊するなどあわせて180戸が被災したほか、道路が寸断され護岸が崩れるなどの被害が相次ぎ、災害復旧工事は2023年の3月まで続きました。
当時、初期の避難や復旧作業などで大きな役割を果たしたのが消防団でした。
「あれ抜井川なんですけど」
被災した大日向と余地地区を管轄する第3分団の分団長を務める倉澤享志(たかし)さん。
5年前も副分団長として現場の指揮をとりました。
倉澤さん:
「あそこが一番被害がひどかった集落になるんですよ。水があふれ出てこっち側の田んぼ、家、床下浸水して」
台風が集落を襲った12日の夜、まず行ったのが避難誘導です。
およそ90人の分団員のうち50人ほどが出動し、川の近くに住む人や一人暮らしの高齢者などの家々を回り避難を呼びかけました。
倉澤さんが住む家もライフラインは寸断。
家族を避難所に残して現場に向かったといいます。
倉澤さん:
「使命感、責任感、自分の生まれ育った地域ですし、地区で暮らしている人の顔も全員わかりますし、あそこの家はあのおじいさん動けなかったなというのもわかるので、動ける自分たちが動かないといけないという。逆に言うと生まれ育った地域だからこそわかるというのもあるんですけど、そうだあの家おじいさんだけだったなとか、あそこのところ確か昔も崩れたよなとかっていうのも」
2日目に行ったのが、被災箇所の調査です。
倉澤さん:
「ちょうどここ今、新しくなっているところが全部道路が(川で)削り取られて落ちた。被害が出ているところを確認しながら地域を全部ぐるっと回って(災害対策)本部にあげる感じで9割以上の情報収集を消防団で担っていました」
3日目から復旧作業が始まりました。
倉澤さん:
「この上から流れてきて、ここの通りの家が土砂で埋まってしまったんですよね」
家屋に入り込んだ土砂の撤去や家財道具の片付けなど、ボランティアセンターが立ち上がるまでのおよそ1週間、作業が続きました。
倉澤さん:
「実際自分が体験したことで他人事じゃない、いつどこで誰が(災害に)あうかなんていうのはもうわからないことなんだと。そのためにどうするっていったらやっぱり防災意識高めるしかない」
台風19号災害を契機に始めたことがあります。
動画アプリなどを使って、南海トラフ地震など様々な災害について知識を得て、地元で起こった場合どんな活動が必要か想定をしておくことです。
また消防団の訓練の種類も増やしました。
火災への対応が中心だったこれまでに加えて、炊き出しの方法や土のうの作り方なども学んでいます。
地域の防災を考える上でなくてはならない消防団ですが、一方で、できることには限界もあると感じています。
倉澤さん:
「災害時ってマンパワーってかなりのものになるので、地域がら過疎地になっている中で若い人たちがいない。いたとしても消防団に入ってくれない。逆にやめていく人たちのほうが多い」
少子高齢化が進み、5年前、第3分団に90人いた団員は今70人を切りました。
また、いくら想定や訓練を重ねても命を守り切れる保証はどこにもないと言います。
倉澤さん:
「自分自身で自分の身を守るという意識を持ってもらいたい」
地区にある大日向小学校では、防災意識を育む取り組みが始まっています。
3年前に保護者が立ち上げたのが防災プロジェクトです。
月に1度、朝の会のおよそ20分間、子どもたちが様々な災害について考えます。
クイズを出題したり、ガラスの代わりに卵の殻を踏んでみるといった体験会を開いたり、子どもたちに主体的に防災について考えてもらうため情報の伝え方に工夫をこらしています。
中心メンバーのひとりで、4年前に移住してきた鈴木千里(ちさと)さん。
以前に住んでいた岐阜県でも災害について学ぶ防災サークルで活動していました。
当時、東日本大震災で被災したメンバーの経験談などを聞き、防災意識を高める重要性に気付いたといいます。
鈴木さん:
「一番下の小さい子に地震があったときにかぶさったけど、あとの二人どうしようって思ったってどれだけ守ってあげるよって思っていても一緒にいないかもしれないし、特に小学生になったら行動範囲が広がるので、じゃあ子どもたち自身が自分で守れないと結局だめだよねって。やっぱり自分の防災意識を高めていくっていうのが大事かなと思いました」
命を守るために必要な行動は。
ひとりひとりが考え災害に備える意識が求められています。
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