県高校総体のバスケットボール競技では初となる、合同チームで挑んだ2つの学校。そこには、学校の垣根を超えた固い絆がありました。
部員わずか3人の女子バスケットボール部
愛媛県立松山東高校女子バスケットボール部。1年生から3年生までの選手11人が所属しています(5月末時点)。
松山東高校の体育館にやってきたのは、授業を終えた東温高校の生徒たち。東温の部員は、3年生2人と2年生1人の、わずか3人。5人で戦うバスケットボールの試合に、単独チームで出場することができなくなりました。
東温高校 女子バスケ部キャプテン 西原紗弥さん(3年)
「不安でしかなかったし、この先どうなるんやろっていう…。先が見えなかったので…」
東温高校 女子バスケ部 重松晶帆さん(3年)
「ずっと先輩たちと試合をしてきて、単独で出られないのは結構つらかった」
東温高校 女子バスケ部 赤松愛菜さん(2年)
「めっちゃ不安で、単独で出たい気持ちもあった」
こうした中、東温は松山東と合同チームを組み、県高校総体に出場することになりました。松山東は、単独チームで出場できる人数がそろっていましたが、両チームは以前から練習試合などを通し交流が深かったことから、東温の部員を快く受け入れました。愛媛高校県総体にバスケットボールの合同チームが出場するのは初めてです。
チームをまとめるのは、松山東のキャプテン・河野凜果さんと、東温のキャプテン・西原紗弥さん。2人を中心に、学校の垣根を超えてコミュニケーションを密に図り、チーム力を高めてきました。
――キャプテンの2人は仲が良いイメージだけど最初からそうだった?
東温キャプテン 西原紗弥さん
「最初はそんなことなかったです」
――気を遣っていた?
松山東キャプテン 河野凜果さん
「最初はちょっと気を遣っていたんですけど、去年夏の合宿で仲良くなって、恋バナとかしていたら仲良くなりました(笑)」
一方、松山東と東温の顧問は、いずれも今年度から女子バスケ部の担当に。バスケは未経験です。週末や試合前など限られた時間の中、練習のメニューは部員たちで決め、技術を磨いてきました。
そんな部員主体の合同チームですが、コートから出ると、カメラに向かってピース、ピース、ピース…!チームの特徴はとにかく元気!オンとオフのメリハリをつけて、練習に取り組んできました。
県高校総体の目標は、1回戦突破です。
東温キャプテン 西原紗弥さん
「練習ではうまくいかないこともいっぱいあったんですけど、コミュニケーションを多くとっていたので、今になっては合同チームでよかったなと思えるようになりました」
松山東キャプテン 河野凜果さん
「最初はかみ合わなくてミスも多かったんですけど、今はお互いにやるべきことをしっかりわかり合っているので、ミスも少なくチームとしてしっかり出来上がっていると思います」
同じユニフォームでコートに 大好きなバスケを最後まで
迎えた県高校総体。3年生にとっては、集大成の場です。松山東と東温、同じユニフォームでコートに立ちます。
1回戦の相手は野村高校。東温の3年生2人の活躍もあり、序盤からリードを奪うと、松山東の河野キャプテンもシュートを決め、チームを盛り立てます。
その後も得点を重ね、合同チームは見事、勝利を収めました。(松山東・東温73-53野村)
松山東キャプテン 河野凜果さん
「無事に勝てて良かったです」
東温キャプテン 西原紗弥さん
「シュート入らんかったけど…、良かった」
松山東キャプテン 河野凜果さん
「次あるけん。頑張ろ」
2回戦の相手は、県内屈指の強豪、済美。序盤から次々とシュートを決められ、第2クォーター終了時点で13-58と、厳しい展開に…。
東温の2年生・赤松さんは、この日、初めての出場の機会も。先輩たちとバスケができる喜びを噛みしめました。
そして試合終了。(松山東・東温41ー131済美)合同チームの戦いが終わりました。
東温キャプテン 西原紗弥さん
「楽しかったよ。ありがとう」
松山東キャプテン 河野凜果さん
「楽しかったね。よかったね、一緒にできて」
東温キャプテン 西原紗弥さん
「合同でよかった。東でよかった」
試合後、最後のミーティング。
松山東キャプテン 河野凜果さん
「新チームになって、東温と一緒になって、本当は関わることもなかった子たちとも一緒にバスケやっていって。最後までついてきてくれて、最後まで一緒に戦ってくれて、本当にありがとうございました」
東温キャプテン 西原紗弥さん
「本来だったら東高は単独で出れたところを受け入れてくれて、一緒に試合に出れてすごく楽しかったし、バスケがあらためて好きだなって実感しました。東温という名前だけで出たいと思っていたけど、みんなでいっぱいコミュニケーションとって仲良くできて、最後こうやっていい形で終われたので良かったなって思っています」
3年生が引退 唯一の2年生部員の元へやってきたのは…
県高校総体から3か月あまり。東温唯一の部員となった、2年生の赤松さん。
そこにやってきたのは、1年生の井手優奈さんです。井手さんは高校入学後、茶道部に入部しました。しかし、小学生時代にバスケの経験がある井手さんは、部員が1人になることを3年生の先輩から聞き、県総体の後、バスケ部との兼部を決めたのです。
東温女子バスケ部 井手優奈さん(1年)
「1人でするスポーツじゃないので。バスケをやりたかったし経験もあるので入りました」
東温女子バスケ部 赤松愛菜さん(2年)
「入部してくれてめっちゃうれしいです。2人いたらパスもできるので(笑)」
9月14日。全国高等学校バスケットボール選手権大会愛媛県予選(ウインターカップ予選)。
県総体の後も、東温は松山東との合同チームで試合に出場しています。選手は7人と、合同を組んでも人数が少ないチームですが、学校を超えた仲間と共にボールを追いかけています。
たとえ部員が減ったとしても、大好きなバスケをしたい-。合同チームで挑んだ青春の記憶は、いつまでも色あせることはありません。
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