5年前の台風19号による千曲川の決壊で、リンゴの産地としても知られる長野市長沼(ながぬま)地区は、大規模な浸水被害を受けました。
地区のリンゴ農家の女性は、地域の復興を目指して動いてきました。
「こんにちはよろしくお願いします」
長野市長沼の津野地区。
長野県内有数のリンゴの産地です。
渡辺美佐さん:
「いいの選んで採ってねー」
リンゴ農家の渡辺美佐(わたなべ・みさ)さん。
9月下旬、親子連れを対象にリンゴの収穫体験を行いました。
渡辺美佐さん:
「この地域はリンゴが盛んなので、今後ここの地域で育っていってくれる子たちなので、リンゴに親しんでもらいたい」
参加した母親:
「子どもにはいい経験になっているかなと思います。(農家の)みなさんすごく頑張っていらっしゃって、おいしいリンゴが毎年食べられるようになってよかったなと思います」
千曲川の決壊で地区の全ての家が全壊…
2019年10月13日。
千曲川の堤防が決壊し、津野地区では73世帯すべての家が、全壊となりました。
変わり果てた渡辺さんの自宅。
最盛期を前にした畑のリンゴも泥に覆われました。
リンゴ農家・渡辺美佐さん:
「このへん一帯は、泥が30センチくらい溜まっていまして、住宅から流れ出たゴミとかがれきが、畑いっぱい広がっていた」
支えてくれたのはボランティアでした。
渡辺美佐さん:
「30センチの泥の根の周りをかいていただいて、リンゴの木に息をさせようとボランティアが助けてくれた。なので今こんなに元気に育ってくれています」
生活の再建だけでなく、地域に再び活気を取り戻そうと、渡辺さんは『津野女子会』を立ち上げました。
被災1年後の2020年の女子会のやりとり:
「1年の追悼イベントをやるっていう話が出ている」
「大きな字を書いて、周りに住民が集まって風船を飛ばすところをドローンで撮ったら、すごくいいのでは」
この地で暮らし、農業を続けようとする女性たちが、地域の将来を話し合うため定期的に意見を交わしてきました。
また、渡辺さんは、住民の有志とともに長沼地区に訪れるきっかけとなるようイベントも始めました。
摘果した実を有効活用しようと、リンゴを飛ばした距離を競う『てっかりんご飛ばし大会』です。
2024年の大会には、2歳から69歳まで、およそ100人が参加しました。
渡辺美佐さん:
「イベントが開かれることで、長沼(津野地区)が頑張っているよ、復興できたよということがみなさんに分かってもらえればいいなと思っています」
子どもたちと一緒に復興を願い…
10月2日、長沼小学校では児童がリンゴにシールを貼りました。
渡辺さん:
「これ大きくていいじゃんこれ、これどう?」
リンゴが赤く色づいたあとにシールを剥がすと、児童のイラストや長沼のマスコットキャラクター『ふくりん』の輪郭が浮かび上がるということです。
被災した木で育ったリンゴを多くの人に知ってもらおうと、復興を願い『ふくりんご』として販売もするということです。
渡辺さん:
「癒しと元気をもらえます」
災害からまもなく5年。
自身の畑のリンゴ栽培にとどまらず、多くのことに力を注ぐ渡辺さんの原動力とは…。
リンゴ農家・渡辺美佐さん:
「絶対この地域を復興してやるという思いが強くて。色んな役をやってみたりとかして本当に忙しい5年間でした」
(Q渡辺さんにとって長沼はどんな地区ですか)
「なんだろう…それ聞かれると涙出てきちゃうんですけど、当時のこと思い出して。感謝する場所というか、いろんな人にこの地域に住んでお世話になっている地域なので、いろんな人に感謝するっていうのかな。思いがこみ上げてきちゃって、涙もろいって言われるんですけど、周りの地域の皆さんとか、災害の時に助けてもらったボランティアの方とか、そういう方に恩返しをしていきたい」
地域を盛り上げることで感謝を伝える。
渡辺さんにとっての復興の形の一つです。
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