石破総理が表明した次期衆議院選挙でのいわゆる“裏金議員”の非公認などをめぐり、自民党内が揺れています。非公認は10人以上となる可能性が出てきていて、安倍派議員らからは反発の声があがっています。
■“裏金議員”を公認か、非公認か…石破総理の線引きとは
良原安美キャスター:
いわゆる裏金議員を公認するのかしないのか、石破総理の判断についてです。
石破総理は6日、裏金事件に関わった議員について、一部を非公認とする方針を表明しました。
選挙での非公認よりも重い処分を受けていた西村元経済大臣、下村元文科大臣、高木元国対委員長。そして、選挙での非公認よりも軽い処分を受けていた萩生田元政調会長、平沢元復興大臣、三ツ林衆院議員を含めた、少なくとも10人以上を非公認とする方針を表明しています。
7日に行わた代表質問では、立憲民主党の野田代表が「相当程度に非公認が生じるのではなく、大半が公認されるのではないか。本当に国民の理解を得ることができるかどうか、よくお考えをいただきたい」と追及しました。
これに対して石破総理は「公認に向けた手続きを進めているところであり、現時点において、公認となる方が誰かは具体的に確定はしておりません」と、詳しい説明は避けました。
比例代表との重複についても方針が示されています。総理は6日、「候補者が選挙区において説明責任を果たし、退路を断って有権者の審判に当落を委ねることとする」としました。
そのうえで、政治資金パーティーをめぐる“不記載があった議員”については、処分内容にかかわらず、小選挙区では公認するが、比例代表との重複立候補を認めない方針を示しています。
ホラン千秋キャスター:
この判断については、「話が違う」という声が党内でも上がっているようですが、どのような経緯でここに至ったのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
まず、党員資格停止になっている人は党員ではないので、西村元経済大臣、下村元文科大臣、高木元国対委員長の3人は、公認が無理だとほぼ確定していました。
プラスアルファをどうするか、この2~3日、ずっと話し合いが続いていたところです。萩生田元政調会長など少し裏金の額が多い方には、今回は無所属になってもらおうと、最終的に石破総理の判断だと思います。
線引きがありまして、裏金の額が多くても、たとえば武田元総務大臣や松野前官房長官は政倫審に出て説明しているので、今回は公認しようということでしょう。
しかし、実際には武田元総務大臣や松野前官房長官は石破総理に近い立場というか、主流派になっています。
一方で、萩生田元政調会長などは、どちらかというと高市議員に近いので、やや政治的な判断も混じっています。党内では、要するに「石破さんのさじ加減じゃないか」という批判もあります。
井上貴博キャスター:
ここのところの石破総理は、党内と世論の板挟みになっていた気がしますが、ここで一つ覚悟を持ったというか、退路を断ったのかなと感じます。
ただ、旧安倍派・高市氏と石破総理は相いれない印象で、それを自民党でくくっているのは無理があるのではないでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
裏金問題のほか、総裁選挙で争われた選択的夫婦別姓を認めるかどうかなど、リベラルと保守の関係が入り混じっているところがあります。
自民党は野党に対して「考え方がバラバラだ」と言っていましたが、実は自民党の中のほうがバラバラだということがわかったので、ある意味では一つの収穫だったかもしれません。
ホランキャスター:
一つの党の中にいろいろな考えを持った方が集まっていて、党としての大きな道筋になんとなく合意している方々で構成されていると思います。今回の決断について、どうみていますか。
産婦人科医 宋美玄さん:
本当に裏金議員の非公認を実行したら、結構面白いことになりそうです。その分、比例などに新しい風を入れざるを得なくなるでしょうし、それで世代やジェンダーバランスなどが変わると、自民党も少し右翼的なものが強いのが、リベラル寄りになるのではないかと思います。
実際、非公認になると当選が難しくなったり、自民党の中で割と保守寄りの人たちが弱体化したりといった可能性はあるのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
無所属になると、いろいろなハンディがあります。もちろん比例復活はできず、選挙運動でも制約があるので大変です。
自民党の場合は、無所属になると連立相手である公明党の支援が受けられなくなるので、これは候補者にとってはかなりきついです。
■石破内閣の支持率は麻生内閣に次ぐ低さで“不吉な数字”?
良原キャスター:
石破内閣の支持率が51.6%だったことが、最新のJNNの世論調査でわかりました。
※10月5・6日、RDD方式(固定・携帯) 全国18歳以上2339人(有効回答1019人)
歴代内閣の発足直後の支持率は、2021年の岸田内閣は58.6%。今回の51.6%という支持率は、2008年の麻生内閣発足時の51.1%に次ぐ低さです(2001年小泉内閣以降)。
さらに、自民党が裏金議員を衆院選で公認することについて聞いたところ、「理解できる」が19%、「理解できない」が75%でした。
井上キャスター:
石破内閣として今の支持率に危機感を覚えているということでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
先週から今週にかけてJNN以外にもいろいろな調査がされていますが、傾向として、支持率は相当下がっています。このまま選挙に突入したら、大変なことになるだろうとみているのではないでしょうか。
麻生内閣(支持率51.1%)のときは政権交代につながっているので、今回の支持率(51.6%)は、自民党にとって非常に不吉な数字ですよね。
産婦人科医 宋美玄さん:
裏金議員を公認しなかった場合、野党は今度、どこを追及してくるのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
おそらく裏金議員が約50人いるうち、公認しないのは10人そこそこだと思われるので、それがまず不十分だということです。ほかには夫婦別姓や税金、社会保障など、自民党の一連の政策論議になってくるでしょう。
産婦人科医 宋美玄さん:
話がそちらに行ってくれたほうが、本質的な政策の議論になると思うのですが…。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
やはり有権者はそちらの選択肢を願っていると思うので、政策論争は早めに始めてもらいたいですよね。
井上キャスター:
石破総理の本音としてはどうなのでしょうか。全員を非公認にするぐらい踏み込みたいのか、さすがにそこまではと思っているのか…。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
全員を非公認にすると数が足りなくなってしまい、それだけで過半数割れしてしまうので、そこまではできないというのが苦しいところです。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年
宋美玄さん
産婦人科医 2児の母
女性の健康などのテーマを発信
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