爪に施されるネイル。華やかになる自分の姿を見て、楽しい気持ちになる人も多いのでは。このネイルを、高齢者や障害のある人へと施す「福祉ネイル」という取り組みがあります。「ときめくこと」を大切に、山口県東部で活動をすすめる女性を取材しました。

人柄と技術生かして「福祉ネイル」を

真剣なまなざしでネイルをしています。下松市のネイルサロンで働く石光愛さんです。ネイリスト歴4年目で、常連のお客さんからは、「優しい」や「かわいくしてくれる」などと、言葉をかけられています。持ち前の人柄とサロンで培った技術。これらを生かして、ことし7月から新たな取り組みを始めました。「福祉ネイル」の仕事です。

大きなカバンを持って石光さんが向かう先は、光市の高齢者向けデイサービスセンターです。

福祉ネイルに取り組むA.ice nail・石光愛さん
「9月になったので、秋のアートとかも少し取り入れたので、そういうのも楽しんでいただきたいなと思います」

認知症予防にも期待

「福祉ネイル」とは、高齢者や障がいのある人を対象とするものです。ネイルの実技だけではなく、福祉の講習などを経て登録を受けた「福祉ネイリスト」が会話をしながら施術をします。健康寿命を延ばすことや認知症予防への効果が期待されています。この活動を始めたきっかけは、石光さん自身の経験からでした。

石光さん
「祖母の爪を整えてカラリーングをしたときに、すごく喜んでくれて、その喜ぶ姿に、私がすごく感動してしまったというのと、もう一つが、以前、結婚指輪と婚約指輪の販売の仕事をしていたんですけども、指輪も爪もすごく面積は小さいんですけど、体に与える影響がすごく大きくて。手元を見るたびに、ときめいたりとか、うれしい気持ちになったりっていうのを、もっといろんな人に知ってもらいたい、感じてもらいたいなというので」

石光さんは店舗を持たずに、施設や個人の家に出向きます。まだまだ始めたばかりということもあり、この日は「体験会」としていましたが、自分で施設への日程調整などをして、開催にこぎつけました。

ネイルをしながら会話も弾む

この日最初に体験をした、安永喜美子さん。年齢は94歳です。

安永喜美子さん(94)
「人間やりたいことやった方がいい。我慢することない」
石光さん
「私いまやりたいことをさせてもらっています。私いますごく楽しいので」
安永さん
「いい、それがいい」

まるで祖母と孫の会話に見えるほど、2人はすぐに打ち解けました。趣味や人生観など話の話題は尽きません。もちろん石光さんは会話だけではなく、ネイルも時間をかけて丁寧に施していきます。美しくなっていく自分の姿に、安永さんは、ご満悦の様子です。

安永さん
「20代の時にやっていたことが、90いくつでできる。これはいいことよね。きょうは楽しかったよ」
石光さん
「私も楽しかったです。ありがとうございます。ときめいていただいて」
安永さん
「本当楽しかった」

体験会が開かれたデイサービス施設リバーサイド・河村智康施設長
「ずっと1年とか2年とか一緒にいる利用者さんなんですけども、今までに見たことないなというような笑顔とか、リアクションされているのを見ると、福祉ネイルはすてきな活動だなと思いました」

まだ少ない福祉ネイリスト

「福祉ネイリスト」の登録者数は、全国でおよそ2500人です。このうち県内は17人にとどまり、まだまだ活動が普及しているとは言えません。そんな中、石光さんはネイリストの仕事と、福祉の学習を両立させながら、体験を含めておよそ100人に福祉ネイルをしてきました。多くの施設や人がこの活動を取り入れ、いくつになってもときめく人が増えるように。

石光さん
「高齢者や障がいのある人は美容とかネイルとか興味があっても、なかなかできないことも多いと思うんですよね。そういう時に、やりたいけど、できなかった。でも、私がこう来ることによって、できた!みたいな感じに、思っていただけるのが、すごいうれしいです。私がずっとキャッチコピーみたいにしているのが、『ときめく気持ちをいつまでも』ということなんですけども、このことを忘れないでほしいですし、ネイルをすることで、また思い出したりとか、していただけたらなと思います」

始まったばかりの、石光さんの「福祉ネイル」。施術を受けた人の爪先だけではなく、顔つきにも明るさが見えてくるように。石光さんはこれからも、精力的に取り組みます。

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