菊池寛賞に続き新潮ドキュメント賞を受けた東京新聞社会部の小沢慧一記者と読者との交流イベントが5日、東京都千代田区の本社で開かれた。小沢記者は「南海トラフ地震と『臨時情報』〜私たちの防災への備え」と題して講演し、読者ら約60人が耳を傾けた。

◆南海トラフ地震「臨時情報」の薄弱な根拠

 臨時情報の根拠として政府は当時、マグニチュード(M)7級以上の地震記録1437例のうち、7日以内にM8級以上の巨大地震が起きた例が6回(約0.5%)で、平常時(0.1%)に比べ相対的に高まったとした。小沢記者は「大地震の後は大地震が起きやすいというのは、地震学の常識としか言えない」という有識者の見解を挙げ「薄弱な根拠」と指摘した。

南海トラフ地震や能登半島地震などについて話す小沢慧一記者(右)=東京都千代田区の東京新聞本社で(池田まみ撮影)

 臨時情報が乱発すれば国民の注意が向かなくなるとし「大地震の前は何か情報が出るとの勘違いから、油断が生まれないか。常に備えることが災害大国での正しい防災姿勢」と訴えた。  東京都足立区の無職石井敏春さん(69)は「地道な取材や思いが表れていた。記者の現場の声を聞けてうれしかった」と語った。講演は東京新聞140周年行事の一環で8月末に予定し、台風接近で順延していた。(山口登史) 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。