長野県内だけで栽培される高級フルーツ・「シナノパール」。
皆さんはどんなフルーツかご存知ですか?
栽培に情熱を傾ける中野市の農家を取材しました。
ちなみに、ブドウではありません!

【宮入キャスター】「シナノパールってご存知ですか?」
【街の人】「知らないです」「知らないです」

長野駅前で100人に聞いてみたところ、「シナノパール」を知っていると答えた人はいませんでした。

【街の人は】「ブドウかリンゴじゃない?」「ブドウとか?」

高級フルーツと聞いて、思い浮かべるのが…。

【宮入キャスター】
「今の主役は間違いなくブドウです 中でも高級ブドウのシャインマスカット!広い売り場の棚が一面、緑に染まっています」

中野市の農産物直売所「いきいき館」の売り場には、年々人気が高まるシャインマスカットをはじめ、およそ20種類のブドウが並んでいます。

そうしたなかで・・・。

【宮入キャスター】
「ありましたこちら、シナノパール!」

(来店客)「大きくてびっくり…シナノパールっていうのは初めて見ました」

初めて見る大きさにまずは驚く、信州が生んだ高級フルーツ「シナノパール」。

生産者は…。

■JA中野市プラム部会顧問 武田茂蔵(たけだ・しげぞう)さん
「ほかの普通のプラムとは全然違います。今までのプラムの概念を覆すような食味です」

中野市の農家・武田茂蔵さんに畑を案内してもらいました。

【武田さん】「これがシナノパールです プラムの中じゃ最大級になりますかね。大きいものはソフトボールくらいあります」

あまりの大きさからプラムなのに棚で栽培。

シナノパールは極晩生の品種で、いまが収穫時期です。

長野県が20年をかけて開発し、2018年に品種登録しました。

【宮入キャスター】「真っ白ですね」
【生産者・武田さん】「パールといった感じの色上がりになりますね 大きさで言えばこのあたりは300グラムを超えてきてるかなと」

大きさ以外にも、強い甘みが特徴のシナノパール。

なかでも、重さが225グラム以上、糖度が18度以上のものを県では「麗玉(れいぎょく)」と名付けてブランド化しています。

1玉ずつ箱に入れられ、東京や大阪のデパートなどで販売されるというその姿はまるで宝石のよう。

化粧箱に入った麗玉は、1つ3000円ほどで販売されるという高級プラムです。

そのお味は。特別にいただきました。

【宮入キャスター】
「うわーずっしり重い!(かじってみて…)すっごい甘い!皮の部分に少しだけ酸味があって、プラムらしさも感じます。このおいしさっていうのはどのくらいの人が知ってるんですか?」
【武田さん】「そうなんですよね…」

JA中野市によると、去年(2023年)のシナノパールの生産量は麗玉も含めておよそ10トン。

2600トンを生産しているシャインマスカットに比べて、まだまだとても希少です。

【武田さん】「非常に難しい品種で、皆さんのお口に届くほどの量が正直、ないんですよ」

およそ570人の中野市のブドウ農家に対して、プラム農家は90人ほど。

その中でもシナノパールを育てているのはおよそ20人に限られます。

そこには、栽培の難しさがあります。

【武田さん】「とてもデリケートなプラムでして、生理障害もありますし」
【宮入キャスター】「生理障害って何ですか?」
【武田さん】「病気ではないんですが果実が黒く褐変(変色)する、そういう症状がすごく出る品種なんですよ」

また、シナノパールはその大きさのため…。

【武田さん】「ポタンポタンと落下してしまう」

自らの重さに耐えきれず、1日に100個ほどが落下することもあり、栽培している半分が廃棄になると武田さんは話します。

【武田さん】「水管理や笠かけなどの『肥培管理(畑の管理』や『摘芯作業(枝切り作業)』も含めて、非常に春先から秋まで手がかかります」

極晩生の品種のため、長く手間暇をかけて栽培している武田さん。

その情熱は20年前から変わりません。

【武田さん】「約20年前に、県の試験場から私のところに現地試験に来た品種なんですよ。名前もなく」

栽培方法が確立されていない、名もなき新種のプラムを武田さんは当時、ほかのプラムと同じように育て、収穫しました。

すると。

【武田さん】「全然おいしくないプラムだったんですよ まあ10年くらいは売るなんてことはできなくて。もう周囲の農家からは、切った方がいいんじゃないかと言われて。そういった悔しさもありました」

その後、武田さんは研究を重ね、シナノパールにあった収穫時期を見極めました。

そして、収穫の時期を秋に遅らせ、大きく大きく育てることで、シナノパールのおいしさを最大限に引き出すことに成功しました。

「9月末ごろに初めて食べたら、あまりのおいしさに断然(栽培に)力が入りましたね」

県内ナンバーワンのプラムの生産量を誇るJA中野市もシナノパールの生産に力を入れます。

近年では生産量も安定し、全体の出荷量のうちおよそ2割が香港やシンガポールへ渡るなど、輸出も増えています。

また、国内では都内のホテルのシェフが新たな食材として注目。

シナノパールの評判は少しずつ広がっています。

シナノパールにこだわる理由は…。
【武田さん】「一番は味ですね 今までのプラムとはひと味違う。本当においしいんですよこれ。ぜひこれ日本中の消費者の皆さんに、間違いのないものを産地から送りますので、食べていただきたいと思います」

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