札幌市民憩いの森、白旗山がいま、無残な姿に。生物への影響や災害の危険性を訴える声も。
一体、何が起こっているのでしょうか。
依頼人(きよみさん・50代・札幌市在住)
「白旗山の森が荒らされています。なぜ、こんなことになっているのか調べてください」
白旗山は、札幌市の郊外にある標高321mの山。自然観察や散策が楽しめる市民の憩いの森です。
しかしいま、その美しい森が危機に瀕しているといいます。
一体何が起こっているのでしょうか?
調査員
「ありました!木がなぎ倒されています。根こそぎ倒されています」
そこには心が痛むほどの荒廃した景色が広がっていました。
倒れた木々が、痛々しいほどに散乱しているのです。
緑豊かな森が一面の荒野へと変わってしまっていました。
6年前の画像と比較すると、森が消失していることが一目瞭然。
日本野鳥の会札幌支部猿子正彦支部長
「いやこれはちょっとひどいわ…」
長年にわたり、白旗山の自然を見守ってきた日本野鳥の会、猿子(ましこ)支部長の言葉には怒りと悲しみが。
日本野鳥の会札幌支部 猿子正彦支部長
「この辺でクマゲラもよく飛び回っていた。あとエゾライチョウが脇道から親子連れで出てきていたが、もう全滅ですね。どうするのかな」
調査員
「奥の木ではダメなのか?」
日本野鳥の会札幌支部 猿子正彦支部長
「枯れ木の中に巣を作る鳥が多いので、奥の木だと若すぎる」
コチラは、この場所で撮影されたクマゲラの映像です。
猿子支部長によると、かつてこの森には国の天然記念物であるクマゲラが営巣し、北海道の準絶滅危惧種エゾライチョウの親子が遊んでいた場所だといいます。
伐採された木々の中には、多くの鳥たちが巣を作り、命を育んでいたのです。
さらに調査を進めると、至るところで大規模な伐採が行われていたがのわかりました。
日本野鳥の会札幌支部 猿子正彦支部長
「大雨が降ったら濁流になって、下に一気にいくんじゃないですか。崖地だから」
木々が切り倒されたことで、土砂災害の危険性も高まっていると指摘。
日本野鳥の会札幌支部 猿子正彦支部長
「今まで白旗山を大事に守り、育てましょうって盛んに言っていたんだけど、これだけでぶち壊しですね」
一体、誰が何のために森を破壊しているのでしょうか?
伐採現場近くで、森林を整備していた人に尋ねると…。
森林整備の職員
「あれは札幌市が行っている皆伐(かいばつ)という作業です」
皆伐とは、特定区域の木々を一度に全て伐採してしまう方法で、札幌市による事業だといいます。
これまでに12か所、30万平方メートルもの森が皆伐されていたのです。
そこで、白旗山を管理する札幌市を直撃しました!
調査員
「なぜ木が切り倒されたのか?」
札幌市みどりの推進部・西村広太担当課長
「白旗山自体が1913年にカラマツの苗木を植栽して、皆伐を進めるというところから始まっている。50年後をめどに再び皆伐するという事業を進める予定」
札幌市によると、白旗山は、もともと林業のために作られた山林で、50年前から伐採を前提に育てられていた森だといいます。
1970年代に国産木材の需要が低下し、一時的に伐採を休止していたただけとのことです。
しかし・・・。
札幌市みどりの推進部 西村広太担当課長
「2020年度に札幌市がゼロカーボンシティ宣言。地域材の需要の高まりだとか、より一層森林の整備を進めていくということを踏まえて、木材を生産するゾーニングに変更しました。2023年度が約2500万円、2024年度が3100万円で売却されています」
ゼロカーボンとは、温室効果ガスの排出ゼロを目指す政策で、札幌市はゼロカーボンシティの実現や地域材の需要の高まりなどを背景に、2023年度「森林整備計画」を改定、本格的な林業の再開へと舵を切りました。
その結果、この2年間で札幌市は5700万円もの収入を得ているのです。
また、国から振り当てられる森林環境譲与税があるので、積極的に森林整備を行わなければならない事情も。
その一方で、札幌市への批判は、日に日に高まっています。
札幌市民
「皆伐は絶対阻止したい。良い木も悪い木も全部切る。札幌市は何をやっているんだ。白旗山は環境林ですから、これは守らなくてはいけない。怒りを込めて今に至ります」
今や札幌市民の怒りは、反対集会にまで発展しています。
札幌の自然を守る会 梶田清尚代表
「森林というのは、札幌市のものだけでなく、日本国民の財産。札幌市だけ、役所の中だけで伐採を決定するのは、相当問題がある」
市民団体は、市民の許可なく森林の伐採を行った札幌市に問題があると指摘。
市民の声は札幌市に届いていないのでしょうか?
札幌市みどりの推進部 西村広太担当課長
「2023年、森林整備計画改定時に、市民から意見聴取する期間を設けましたが、特段の意見はなかった」
札幌市は、ホームページで1か月間の意見募集を行ったが、特に意見がなかったので皆伐を実行したと説明しています。
一方で、「ゼロカーボンのため」という札幌市のそもそもの主張にも疑問の声が・・・。
札幌の自然を守る会 鈴木直樹さん
「真逆のことをやっている。排出が多いことになって、ゼロカーボンにならないと計算でも出てくる」
市民団体の試算では、白旗山の皆伐は、吸収量より排出量の方が多くなり、かえって二酸化炭素を増やす結果になると主張しています。
では札幌市の根拠は…。
札幌市みどりの推進部 西村広太担当課長
「個別の計算は行っていないが、都心でも炭素を固定しつつ、山で新たな木を植えることで、炭素を吸収できるという理論に基づいてやっている」
札幌市は、根拠となる具体的な数字は持ち合わせていなかったのです。
そして、最も深刻な問題、希少生物の森を伐採したことについては…。
札幌市みどりの推進部 西村広太担当課長
「特に環境調査は行っていないが、極力、環境に負荷のかからない方法で取り組んでいる」
希少な動物たちが暮らしていた森を、札幌市は調査もせずに皆伐していたといいます。
札幌市みどりの推進部 西村広太担当課長
「森林機能を維持していく中で重要な手法の一つとして、皆伐を行っていきたいと考えている。皆伐には市民の理解が欠かせないので、しっかり周知しながら理解してもらえるように努めていきたい」
白旗山の未来は、どうなってしまうのでしょうか?
【調査結果】
白旗山の荒れ地は、札幌市が行った皆伐の跡でした。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。