<医療の値段・第5部 続・明細書を見よう>①  6月の診療報酬改定に合わせて生活習慣病の診療代の頻回な請求を取り上げた連載第3部に、多数の情報や意見が寄せられた。改定後は「医療費が値上がりした」「薬の長期処方やリフィル処方を断られた」という声が今なお届く。問題をもう一度追った。(杉谷剛が担当します)

◆高血圧で月1回通院する女性は…

 「6月の受診の際、医師から『診療報酬改定があって値上がりするんですよ』と言われました。精算すると、1000円近く上がったので驚きました」  関西に住む50代の女性は高血圧で、1年ほど前から自宅近くのクリニックに月1回通院していた。  5月の診療代は、生活習慣病などの継続治療で請求される「特定疾患療養管理料」2250円(診療報酬点数225点、1点10円)など計5060円。自己負担は3割で、窓口で1520円を支払った。

◆診療内容は同じなのに、新しい項目が…

 ところが、6月の支払いは2470円と、診療内容は同じなのに950円もアップした。診療明細書を見ると、特定疾患管理料の代わりに「生活習慣病管理料(Ⅰ) 高血圧症を主病」(6600円)という新しい項目があった。  女性がネットで、この診療報酬を調べると、多くの診療所や中小の病院が同じような「お知らせ」をホームページに載せていた。

厚生労働省

 「6月に『特定疾患管理料』の対象から糖尿病、高血圧症、脂質異常症が除外となり、厚生労働省の指針に従い、該当の患者様は新たに『生活習慣病管理料(Ⅱ)』へ移行します」  (Ⅱ)は3330円と(Ⅰ)の半額だ。「どうして私は(Ⅱ)ではなく、(Ⅰ)を請求されたのかしら」。女性は疑問を持った。  新たに登場した(Ⅰ)は検査や注射、病理診断などがパッケージされている包括料金。検査が多ければ割安だが、少なければ割高となる。一方、(Ⅱ)は検査などを含まず、実施のつど加算される出来高払いだ。

◆「説明もないのに値上げは納得できない」と…

 女性は検査をしたことがないのに、なぜ(Ⅰ)を請求されたのか、医師から説明はなかった。「きちんとした説明もなしに、年1万2000円の値上げは納得できない」。次回に説明を聞こうと、次のような手紙を事前に受付に託した。  「私は血圧測定と問診以外に検査などは受けておらず、今回その費用が上乗せされ、包括となる理由が見当たりません。(Ⅱ)で算定されるべきだと考えます」

訂正前の女性の診療報酬明細書。「医学管理等」として「生活習慣病管理料(Ⅰ)660点(高血圧症を主病とする場合)」を算定している(一部画像処理)

訂正後の診療報酬明細書。生活習慣病管理料(Ⅰ)の代わりに(Ⅱ)333点を算定している(一部画像処理)

 6月下旬に女性が再受診すると、院長が応対した。女性が説明する。  「院長先生から『お手紙を読みました。(Ⅱ)にしたいんですね。訂正します。すみません』と言われ、新しい明細書を受け取りました。差額の980円が現金で返ってきましたが、黙っていたらそのままだったでしょう。これって便乗値上げじゃないですか」

 特定疾患療養管理料 ぜんそくや胃炎、狭心症などの療養で、「地域のかかりつけ医が計画的に服薬や運動、栄養など療養上の管理や指導を行ったとき」に月2回まで請求できる。約30の対象疾患から高血圧などが外れ、代わりに生活習慣病管理料(Ⅰ)か(Ⅱ)で請求することになった。頻回な診療を防ぐため、請求は月1回に限定された。

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