経営難で60年の歴史に幕を下ろした北海道旭川市の銭湯を銭湯文化を愛する若者たちが蘇らせました。
しかし、入浴客は戻ってきてくれるのか再開までは、葛藤の連続でした。
9月、1年半ぶりに復活した、旭川市神楽の銭湯「菊の湯」。湯船にかつての賑わいが戻ってきました。
客
「ところどころスタイリッシュで、なんか、昭和と令和の融合みたいな感じで、カッコイイです」
「いいね」
しかし、銭湯の再開には多くの試練がありました…。
入浴客の減少や燃料代の高騰などの逆風に晒されてきました。
「菊の湯」前経営者 熊谷清志さん(70)
「(入浴客減少など)ダメージがすごく大きくて、最終的に営業が難しいという判断をして、やめる決心を去年つけて、(去年)3月いっぱいでやめた」
ところが、銭湯を継ぎたいと名乗り出る若者が現れました。
京都で銭湯文化を広める活動をする塩路道徳(しおじ みちのり)さんです。
FRO CLUB(京都)塩路道徳代表(38)
「菊の湯が閉店したことで、悲しんでいる神楽の人たちが来てくれるのではないか。若者が積極的に来てくれる銭湯カルチャーを旭川に広めたい」
しかし、銭湯経営の厳しさを知る熊谷さんに猛反対されます。
「菊の湯」前経営者 熊谷清志さん(70)
「お風呂屋さんだから大変です。時間的な拘束や金銭面とかあるので。それを分かった上でやってほしい。やる以上は長く続けてもらいたい」
熊谷さんを半年かけて説得し、施設を借り受けた塩路さん。
「新生・菊の湯」の目玉に据えたのは、若者にも人気のロウリュ式のサウナ。
クラウドファンディングでの資金調達も順調に進みましたが…。
FRO CLUB(京都)塩路道徳代表(38)
「3年くらいでサウナ代をペイにできる計算になっている」
またしても意見が対立。光熱費が割高のサウナの導入を、熊谷さんが心配したのです。
塩路代表「サウナを残すことは銭湯には重要」
熊谷さん「今はな」
塩路代表「今じゃなくて今後もです」
熊谷さん「いや、わからんぞ」
塩路代表「(銭湯から)サウナを無くすことで客は減っていく」
熊谷さん「まぁ、やってみれ。俺なら絶対やらんぞ」
塩路代表「僕らもそれで…頭を打つこともあるかもしれないけど1回僕らはそれでチャレンジしたい」
熊谷さん「やってみれ」
塩路代表「わかりました」
サウナにも勝る、熱い思いが通じました。
「菊の湯」前経営者 熊谷清志さん(70)
「2度と風呂屋はやらないと思っていた。若い人たちがやらせてくれ、やらせてくれって何とか再生させたいと言うから。新しい感覚で経営していくなら、それはそれでいい」
当初は、5月の大型連休までにオープンする予定でした。
FRO CLUB(京都)塩路道徳代表(38)
「めちゃくちゃ大変です。想像していた以上に大変。1年の間で、これだけ老朽化していくのを肌で感じている」
本来は、新・菊の湯の運営にタッチしないつもりだった前の経営者の熊谷さん。
作業の遅れを見かねて、本腰を入れ始めます。
8月には、待望のロウリュ式サウナの設置や配管工事が完了。
そしてようやく迎えた試験運転…何度点火しても、ボイラーがうまく動きません。
じわじわと塩路さんに焦りの色が…。
「菊の湯」新経営者 塩路道徳さん(38)
「職人も初めて(扱う)バーナーだったので、どうなることかと思った。一瞬、目をそらしていたけど、最悪の展開にならなくてよかった」
原因は煙突の目詰まりでした。
浴槽に湯が張られ、目玉のロウリュ式サウナも無事に動き出し…。
「菊の湯」新経営者 塩路道徳さん(38)
「最高です。思った以上にいい」
待ちに待った開店の日。
「菊の湯」前経営者 熊谷清志さん(70)
「一旦、やめると言ってやめているから、再開はすごくうれしいけど。難しい、心境としては。でもいいんじゃない、にぎわってくれて常連客とも会っていろんな話もできて、この次につながっていけばいいことだから」
初日の入浴客は、目標の300人に到達。
幾度もあった対立やトラブルを乗り越えての大入りでした。
「菊の湯」新経営者 塩路道徳さん(38)
「頑張ります。ありがとうございました」
「菊の湯」前経営者 熊谷清志さん(70)
「はい、ごくろうさん」
いつまでも残したい銭湯文化。再び、「菊の湯」が地域に根付こうとしています。
再開後の「菊の湯」ですが、多い日には150人の客が訪れるそうです。
去年の閉店のときには、常連客が70人程度だったそうなので、半分以上、新規客ということになります。
■「菊の湯」
・北海道旭川市神楽5-14
・午後2時~午後0時
・不定休
・大人500円(サウナ 別途200円)
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