「エロイカより愛をこめて」などの作品で知られる、山口県下関市出身の少女漫画家・青池保子さんの60周年を記念する原画展が、下関市立美術館で開かれています。故郷では初めての個展開催。思い出の地を巡りながら、その思いを聞きました。

40年以上愛される最大のヒット作

東西冷戦を背景にしたスパイアクションコメディ「エロイカより愛をこめて」は、青池保子さんの最大のヒット作。エロイカと呼ばれる怪盗、グローリア伯爵とNATOの情報将校エーベルバッハ少佐の主人公2人は、1977年の連載開始から今なお熱狂的なファンに支持されています。

この2人が下関市の赤間神宮を背景に描かれたカラーイラストは、今回の個展開催のために特別に制作された書き下ろしです。

北九州市から・ファン歴45年
「12年ぶりの『エロイカより愛をこめて』の書き下ろしに、もう、感動しました、もうその一言です。青春時代からずっと読んできましたので」

漫画家生活60年の集大成

下関市立美術館で開かれている「青池保子展Contrail航跡のかがやき」は、漫画家生活60周年を記念した大回顧展です。およそ300点の原画、資料を含めると400点以上が展示されています。

北九州市から・ファン歴20年
「もう想像以上で、期待した以上の。原画のイラストの本当にていねいな描き込みのきれいさ、あれは印刷だけではわからないので」
北九州市から
「母の漫画をちらっと数巻読んだことがあるくらいで、あまりそこまでくわしくはなかったんですけど、色使いがとてもきれいで、絵としても楽しめてすごく満足しています」
柳井市から
「自分の生まれる前からデビューされて描かれてる方なんですけれども、それでも今になってまた新しく連載されてたりとか熱量のあるすごい方だなって」

下関が生んだ少女漫画の巨匠が、故郷で開く初めての個展です。

青池保子さん
「アナログならではの手作り感、体温を感じるようなですかね、それを感じてほしいなと思います」
関谷名加アナウンサー
「60年を迎えられて今のお気持ちはいかがですか」
青池さん
「疲れちゃった、あはは」

通学路に奇祭で知られるあの神社

青池保子さんは、1948年、7人きょうだいの末っ子として生まれました。生家があるのは、天下の奇祭と言われる数方庭祭で有名な下関市長府の忌宮神社の近くです。

青池さん
「通学路なんですよ。毎日通ってました。7月に入ると数方庭祭のお囃子のお稽古が始まって、うちの家に必ず聞こえてくるんですよ。お囃子のお稽古の音が。懐かしいので、いまだに来ますよ。お祭りの日に1日は見に来ます。ちょうどお盆に帰った時に」

風情のある城下町で育った青池さん。漫画を描き始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

青池さん
「自然に描いてた、気がついたら描いてたみたいな感じ。父が日本画をやっていましたし、そばでこちょこちょこ筆を触ったりなんかして邪魔をしていたんですよ。それがとても心地よかったのかな、自分には」

中学3年生で漫画家デビュー

中学1年の頃、姉と共に、下関の漫画家を訪ねます。その漫画家に作品を送ったことがきっかけで、1963年、中学3年の時にデビュー!そのデビュー作が「さよならナネット」です。主人公の少年と、外国に帰ってしまう少女の淡い初恋の物語でした。

関谷アナ
「あの当時、少女漫画で男の子目線の恋愛ものは?」
青池さん
「なかったですね」
関谷アナ
「その発想は?」
青池さん
「それはやっぱり少年誌ばっかり見てたからじゃないですか、あはは。デビュー作描いた後にもうちょっと少女漫画を勉強しなさいとか言われた時に、あぁずいぶん違うんだなって初めて思ったって感じですかね」

初連載は「暗黒時代」

デビューしてほどなく、高校生にして週刊連載を担当することになります。

青池さん
「それが初めての連載でしたけど、大層しんどかったですね。暗黒時代」
関谷アナ
「めまぐるしい日々ですよね」
青池さん
「そうですね、だから女学生らしい青春はなかったですね」

フリー転身「やりたいこと」貫く

それからずっと走り続けてきた青池さん。ストレスや目の酷使が原因で眼病になり、1973年、雑誌専属からフリーになります。そして、1976年に連載が始まった「イブの息子たち」が、少女漫画界に衝撃を与えました。

青池さん
「これまでやりたかったことを全部ぶっ込んだっていう」

ロックあり、歴史パロディあり、SFもBLも何でもありのハチャメチャコメディです。主人公の男の子3人は当時、青池さんが好きだったイギリスのロックバンドなどがモデルとなっています

青池さん
「胸毛までちゃんと生えてる」
関谷アナ
「気づかなかった。美しい顔と胸毛はなかなかリンクしないんですけど」
青池さん
「でも描きたかったんです」

王道少女漫画の固定観念を覆すこの作品は大ヒット!「自由にやりたいことをやってもいいのかも」と他の漫画家にも変化をもたらしました。ただ・・・

青池さん
「1通だけ批判的なファンレターが来まして。あなたは堕落した、さようならってね」
関谷アナ
「それファンレターですか」
青池さん
「すごいでしょ、すごいでしょ、そんなのが来ちゃったの」

背景・衣装もリアルに描く

めげずにやりたいことを貫いた青池さんは、これ以降、発表する作品が軒並みヒットしていきます。

関谷アナ
「こちらは中世三部作と言われる作品ですけれども、もうとにかく背景ですとか、衣装がすごくきれいですよね」

青池さん
「そうですよね、よく塗りたくりましたね。細い筆で全部手書き。どうかしてますよね」

歴史的建造物などリアルに描かれた背景に、中世ヨーロッパの豪華けんらんな衣装。質感の違いや立体感も見事に表現しています。

下関市立美術館・関根佳織学芸員
「青池先生は西洋美術ですとか歴史にとても造詣(ぞうけい)が深くて、作品の中にそういった知識を組み込んでいて、美術ファンの人、青池さんの作品を全然知らないよ~という人もですね、見て、とても楽しめる内容です」

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