パリ五輪でも注目を集めた「ブレイキン」。日本人初の世界王者に輝いた男性が静岡県掛川市のダンススクールで講師を務めています。「生きづらさ」と向き合う人たちに個性が輝く舞台を。元世界王者のメッセージです。

9月、JR掛川駅前で行われた「カケガワ・バンド・フェスティバル」。このイベントでひときわ注目を集めていたのが「KARASAWA DANCE CREW」です。クルーが踊るブレイキンなどのダンスは、会場を大いに盛り上げました。

<唐沢剛史さん>
「何を伝えたいか、ダンスを通じて皆さんに伝わっていく。そんな風に見ていただくと楽しいと思います」

クルーの代表で講師を務めるのが唐沢剛史さん48歳です。唐沢さんは1998年のブレイキンワールドカップ団体戦で日本人初の優勝を果たすなど、世界の舞台で数々の好成績を収めてきました。

東京都出身の唐沢さんは、結婚を機に静岡県へ移住。現在は掛川と藤枝のスタジオで3歳から55歳までの約250人にダンスを指導しています。

<ブレイキンの指導を受ける宮地碧輝さん(17)>
「先生はヘッドスピンという技が上手。ブレイキン界で見るとレジェンドだと思います」

唐沢さんがブレイキンに力を注いだきっかけは、自身の過去の経験です。高校に入学してまもなく、先天的な「脱毛症」を患い、人前に出ることを避け、高校を中退しました。絶望の淵で、唐沢さんに生きる道筋を与えてくれたのが、中学生の頃から好きだったブレイキンでした。

<唐沢剛史さん>
「友達が迎えに来てくれて『剛史も一緒に遊ぼうぜ、ダンス来いよ』って言ってくれて、ちょっと勇気出して行ったんですけど、帽子を取らなくてもいい世界がそこにあったというか」

唐沢さんのスクールには、障害のある人が通うクラスがあります。約50人のメンバーは、ダウン症や自閉症、知的障害があります。

掛川市の自宅で日課の自主練に励む原明穂さん25歳です。原さんは自閉症と向き合っています。

<明穂さんの母 原香里さん>
「生まれつきの脳の機能障害で、小さい時にはもっと本人が大変で、こだわりとパニック、ルーティーンが必要でいつもと違うことに弱かったり」

原さんは小学6年生のとき、唐沢さんと出会いました。そこからダンスを続け、10年以上、スクールに通っています。

いまでも些細な変化や言葉が気になり、練習中にパニックを起こすことがあると言います。

<明穂さんの母 原香里さん>
「この子だけでなくほかの子にも寄り添ってやってくれている普段から分かろうとしてくださる姿勢がこの子たちにも伝わっている」

<原香里さん>
「先生好き。好きだから好き」

<唐沢剛史さん>
「ブレイクダンス(ブレイキン)というのはヒップホップという考えなんですけど、それって『平等』なんですよね。その人がどういうような容姿であれ、全く気にしない関係ない。(人の)内から出る、踊りのエネルギーみたいなものがみんなで共有できればそれでいいっていう形なので」

人それぞれの個性が輝きを放つ。唐沢さんが目指すブレイキンです。

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