ちょっとグロテスクで、新潟では市場に流通しないこの魚をご存じでしょうか?
『エソ』。いわゆる“未利用魚”です。

この「未利用魚」を就労支援に活用し、おいしい出汁を作る…。
そんなプロジェクトが始まっています。

9月11日の新潟港に、水産業を営む井村洋人さん(50歳)の漁船を訪ねました。
この時期は、旬の魚アマダイなどが揚がります。
そんな中、新潟ではまだ“見慣れない魚”があがりました。

【ななみ社長 井村洋人さん】
「エソですエソ。未利用魚。近年すごい勢いで増えていますね」

爬虫類のような顔で細かい歯が並び、見かけはちょっとグロテスクな『エソ』。
小骨が多いうえに鮮度の落ちも早いため、いわゆる”未利用魚”として新潟県内では市場に出回りません。

「もともと新潟では食べられていなかったんですよね」
「本来すごく美味しい魚なんですが、新潟ではまったく馴染みのない魚で…。要は市場に出しても見向きもされないっていう魚です」

もともと、日本の南から台湾にかけての“海水温が高い海”に生息するエソですが、新潟でも2018年ごろからまとまって水揚げされるようになったそうです。

【ななみ社長 井村洋人さん】
「正直、邪魔な存在になるわけですよね、あと他の魚も傷んでしまったりとか…。例えば、のどぐろ10匹の中にエソが500kgとか1トンとか、そういう入り方をする未利用魚なんですよ」

エソは、西日本では高級かまぼこの原料として知られています。
この日は200kgのエソが水揚げされ、山口県の練り製品業者へ送られました。

一方で新潟では、エソはまだ使い道がない魚、やっかいもののような魚なのです。

「いまだに未利用魚なんだよね。それがまさかね…」
「本当にすごい人に出会ったなと思ってさ。あの人ならやるよ」

井村さんはこの日、1箱分(5kg)のエソを新潟県上越市に送りました。
“やっかいもの”を有効利用するプロジェクトのためです。

漁師の井村洋人さんが期待を寄せる”あの人”とは、新潟県柏崎市で障がい者の就労支援を行っている『With You』の小林俊介社長です。

【就労支援事業所 With You 小林俊介社長】
「水産の課題解決に就労支援が重なったってのは本当に偶然というか。でも、必然みたいなところもあるとは思うんですけど…。よくぞ、この話がうちに来たなとは思いますよね」

小林さんは私たちに、上越市の実家を案内してくれました。
エソを出汁の原料にできないか?という、スタートしたばかりのプロジェクトを、ここで進めているんだそうです。

「今はまだ試作段階なので、実家のキッチンとかガレージを使いながら、“ラボ”みたいな感じにして…」

その加工を障がい者に担ってもらい、就労支援につなげるのが狙いです。

「可能な限り安全に配慮して…。キッチンバサミを使い、包丁は全く使いません」

この日、新潟県柏崎市にある就労支援事業所『With You』から来た2人が「エソの加工」に挑戦しました。

まずはエソのうろこをはがし、ヒレと頭を切り落として、内臓を取り除いたら、下処理は完了です。

【加工に初挑戦…】
「最初は触ったことがなかったのでできなかったんですけど、やっていくうちにだんだんとやり方も分かってきて、進められるようになりました」

さばいたエソを250℃のオーブンで15分焼いた後、乾燥機で丸1日乾燥させます。
試行錯誤を4か月繰り返し、ようやく今のスタイルができたそうです。

そして、エソからつくった出汁!
― 味はどうなのでしょうか?

【記者レポート】
「香りメチャメチャ良いですね。おいしい!意外とあっさりで、上品ですね…」

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