前の副市長は辞職直後の取材に「一身上の都合以外に理由はない」と答えていました。3年前に、青森県五所川原市が発注した市営住宅の関連工事3件を巡り、警察は共謀の上、公正な入札を妨害したなどとして、五所川原市の前の副市長ら3人を逮捕しました。
官製談合防止法違反などの疑いで逮捕されたのは、五所川原市の前の副市長・一戸治孝容疑者(71)、建築設計業の会社役員・片山弘一容疑者(70)、それに五所川原市の無職・石井隆夫容疑者(70)の合わせて3人です。
警察は27日午前、一戸容疑者らから事情を聴き逮捕すると共に、関係先の捜索を行いました。
警察によりますと、事件は2021年11月に行われた市発注の3件の工事の指名競争入札を巡って起きました。一戸容疑者と片山容疑者、それに石井容疑者は特定の業者に落札させる目的で事前に打ち合わせを行いました。そして、実際に特定の業者に落札させて公正な入札を妨害した疑いが持たれています。
一戸容疑者は8月、「一身上の都合」を理由に議会開会直前に辞職していました。
一戸治孝容疑者(8月29日取材)
Q.辞職の理由を伺いたいのですが?
「きのう議会でしゃべったでしょう。一身上の都合って。それ以外はないです」
Q.一身上の都合というと?
「一身上の都合です」
市営住宅の関連工事3件を巡る官製談合事件
今回の談合の舞台になったとみられるのは五所川原市若葉地区の市営住宅の関連工事です。指名競争入札の工事は通路や駐車場、児童遊園など3件あり、すべてあわせた落札額は約3900万円でした。落札率は95%~97%で、市の担当者は「落札率としては平均的な数値であり、とりわけ大きいというほどでもない」と話しています。
前の副市長の逮捕に、「残念」という声と共に「そういう噂はあった」と話す市民もいました。
市民は
「この間、辞職したのではなかったのではないか。そういうことがあるから辞めたのかな。何かあるから辞めたんでしょう。一身上。残念だね。中々、優秀な人であったらしいけどね」
「残念ですね。一戸さんは知っている方なので残念です。何となくそういう噂は聞いていましたけれども…」
警察は捜査に支障があるとして、一戸容疑者ら3人の認否を明らかにしていません。
庁舎の家宅捜索… 佐々木孝昌市長が会見で語ったことは…
官製談合などの事件現場となった五所川原市役所です。27日午後6時過ぎに警察が庁舎の家宅捜索を始めました。
8月まで副市長だった一戸容疑者の逮捕により、事件は今後、五所川原市役所の指名競争入札のあり方なども焦点となっていきます。市役所から中継でお伝えします。
新井宇輝アナウンサー
さきほど、5分ほど前に警察車両が駐車場のなかに入ってきました。職員用の出入り口に捜査員の方々、数名が入りました。これから警察が庁舎の家宅捜索を始めるとみられます。
今回の事件では、前の副市長の一戸容疑者ら3人が妨害したとされる入札は、こちらの庁舎2階にある会議室で行われました。
家宅捜索では、会議室や入札の担当部署がある2階には明かりがついていて、証拠を集めているものとみられます。
市役所の担当部署に日中の閉庁時間に取材をしたところ、職員は「報道を聞いて、ショックを受けた。課としても詳細がわからないので困惑している」と話していました。
当時現職の副市長だった一戸容疑者が今回、逮捕されたことを受け、佐々木孝昌市長がさきほど会見を開き、今後、対応を講じる考えを示しました。
五所川原市 佐々木孝昌 市長
「私はいまだに信じがたいと思っています。私は一戸副市長については非常に厳格で人格者だと思っています。これをひとつの契機にして透明性・公平性をどのように担保するかも含め、これから総務部長を中心にして庁内でしっかり対応してほしい」
市民からの信頼を損ねることとなった今回の事件。関係者、そして市民から真相の究明を求める声が上がっています。以上、中継でお伝えしました。
『五所川原市官製談合事件』27日現在で分かっている情報まとめ
五所川原市が発注した2021年の工事を巡る官製談合事件で、前の副市長ら3人が逮捕されました。
ここまで分かっている情報をまとめます。
まず、3人の関係ですが、一戸容疑者は五所川原市の前の副市長。片山容疑者は建設・設計を行う会社の役員。石井容疑者は現在は無職ですが、元は市の職員でした。
なお、27日に会見した佐々木市長は自身との関係について、一戸容疑者、石井容疑者は同じ中学校。そして片山容疑者は同じ高校。同じ学校に通っていた間柄だったと明らかにしています。
警察によりますと逮捕された3人は市営住宅の関連工事の入札を巡り、2021年10月、県内、またはその周辺に集まり、特定の業者に落札させようと打ち合わせを行いました。そして、実際に特定の業者らに落札させて、公正な入札を妨害したということです。
佐々木市長によりますと、一戸容疑者は市の組織である入札審査会の会長で、市長も一戸容疑者にその運営を「一任」していたということです。
この入札審査会は入札に参加する業者などに関して協議が行われていたということです。
それから3年後の8月、一戸容疑者は「一身上の都合」を理由に副市長を辞職しました。
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