奄美大島では、伝統的な古民家を改修して地域の風習・文化を体験できる宿泊施設のことを「伝泊」と呼んでいます。
将来、失われてしまうかもしれない奄美の文化や風習を守ろうと、新たな取り組みが始まっています。
奄美大島に残る古民家。台風の雨・風から建物を守るため、石垣やブロック塀に囲まれています。
風の影響を減らすため、背の低い平屋になっていて、母屋や水回り、納屋がそれぞれ別棟になっているのも特徴です。
古民家の中には築年数が100年を超えるものもありますが、人口減少や高齢化に加え、近代的なデザインの住宅へのニーズが高まり、今、空き家が増えつつあります。
こうした中、奄美の古民家を活用し、地域を盛り上げようと、8年前に始まったのが、「伝泊」。古民家をリノベーションした観光客向けの宿泊施設です。
古民家らしさを残しつつ、トイレを温水洗浄の便座にするなど、快適性を高めています。
(伝泊・広報課 永嶋美南さん)「時の流れとか昔の人たちの暮らしという時を、泊まりながら体験してもらえるような滞在をしてほしい」
奄美市のこちらの事業者では、古民家を奄美大島で8棟、加計呂麻島で4棟、徳之島で6棟を改築し、観光客に一棟貸ししています。
単に宿泊するだけではなく、島の文化にもっと触れてもらおうと、地域の伝統行事に、宿泊客にも参加してもらうプラン作りが始まっています。
奄美市笠利町・屋仁集落で毎年9月に行われている八月踊り。400年以上前に始まったとされる伝統行事です。
両親が奄美大島出身で、去年2月、神奈川から移住してきた伝泊の永嶋美南さん(28)。
来年の八月踊りに宿泊客も参加してもらうため、この日、県外出身のスタッフ2人ともに、実際に体験することにしました。
(伝泊 永嶋美南さん・28)「先祖とか年上の方、目上の方に感謝するという心があるとか、人として大事なことに気づかせてもらえるという意味で、すごく癒しの島だなと私は思う」「おじゃましますという集落への敬意を忘れずに、一緒に楽しんでいけたらと思う」
(埼玉県出身 川畑輝明さん)「中にちゃんと入っていけるかなというのはちょっと不安」
(北海道出身 西村愛沙さん)「体験したことのない文化なので今から見るのがとっても楽しみ」
陽が沈んだころ、屋仁集落に住民たちが集まってきました。
八月踊りは、稲の収穫を祝う踊りで、男女が輪になって歌をかけあいながら踊ります。屋仁集落では20種類もの歌と踊りが継承されています。
(記者)「集落の伝統の踊りの輪に伝泊のスタッフも加わります」
最初のうちは、ぎこちない様子の3人でしたが、次第に笑顔で踊りに加わっていました。
八月踊りには、かつては100人以上が参加していましたが、今では人口の減少で70人ほどに。
これまで伝統行事に集落以外の人を迎え入れることがほとんどなかった中、住民は…。
(屋仁集落の住民)
「にぎやかになってうれしい。五穀豊穣神様に感謝のお祝いだからこれがないとだめ。地元にいるものはそれを引き継いで、伝統を紡いでいく責任がある」
「踊りをみんなに知ってほしいので、もう思い切って来てほしい」
(埼玉県出身 川畑輝明さん)「みんな何か入ってきていいよみたいな形でいてくれるので、自然な感じで入ることができてすごく楽しい思いをさせていただいた」
(北海道出身 西村愛沙さん)「輪の中に入った瞬間にすごく一体感を感じて、すごく楽しかった」
およそ3時間続いた八月踊り。3人も集落の輪に溶け込んでいるようでした。
(伝泊・広報課 永嶋美南さん)「島の人と観光客が交流する機会を提供することが伝泊古民家でやりたいことでもある」
島の伝統行事を新たな観光資源に。文化や風習を守る挑戦が始まっています。
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