学校給食のパンと言えば細長い「コッペパン」。ところが、最近は地域によってパンの提供が一時中止されるなど、存続が危ぶまれています。
大分県学校給食会は、日田市にある小中学校にパンを提供していた業者について「安定供給が難しい」と判断し、今年4月からの契約更新を見送りました。このため、日田市内の小中学校など31校では1学期中、米飯のみとなりました。その後、新たな業者がみつかり、2学期からパンの提供が再開されています。
学校給食の主食は、1976年に米飯が導入されるまで全てパンでした。現在は、週2回から月に数回と市町村によってばらつきがあります。パンの提供は年々減少傾向にあり、大分県全体の平均は週1.85回となっています。
一体現場では何が?
小麦粉などパンの材料は、県学校給食会が一括購入し、委託された工場で製造され、各学校に納品されます。
エネルギーコストの高騰や人件費の上昇により、工場への加工賃は10年前より約17.5%も上昇しています。それにもかかわらず、委託工場の数はこの10年間でほぼ半減しているのです。児童生徒数の減少による採算性の低下、職人の高齢化が大きな要因です。
大分市内にある「つるさき食品」は、1日最大1万個の給食パンを提供しています。全国的に給食パンの製造は『前日焼き』『当日配送』が主流ですが、「つるさき食品」では、毎日、当日にパンを焼いて配送しています。
つるさき食品 足立洋三社長:
「大分県では当日焼き、当日配送が主流です。しかし、遠方の地域に学校給食を届けるのは難しく、提供できない地域が出ているのが現状です」
「つるさき食品」では、毎日午前1時から生地作りを始め、午前8時には配送を開始します。しかし、職人の高齢化が進み、技術の継承や人材確保に苦慮しています。
つるさき食品 足立洋三社長:
「人口減少や物価高騰で、10年後、15年後に担い手をどのように考えるか。関係各所と協議を詰めていくのが喫緊の課題です」
給食は重要なインフラ
九州有数の小麦の産地として知られる大分県宇佐市。この日の和間小学校の給食に出されたのは、地元産の小麦で作られた冷凍パンです。
市内では、2016年度に業者の撤退で一時多くの小中学校でパン給食が途絶えました。現在は、地元業者が開発した冷凍パンを購入しています。パン給食は月2回程度ですが、子どもたちに大変人気があります。
児童「もちもちでおいしい」「いつものパンよりちょっとおいしい」
――ご飯とパンはどっちが好き?
児童「パンです。週4回ぐらい出てほしい」
上野恵美栄養教諭:
「おいしいと大きな反響がありました。いろんな国のおかずを出すなど、食が多様化してきていますので、少しでもパンがあると献立として立てやすい」
和間小学校では、5年生が自分たちの給食に使われる小麦を栽培。パンができるまでの過程を学びながら、感謝の気持ちを育んでいます。
担任の先生:
「たくさんの人の力のおかげでパンができて、食べられているということを感じながら感謝の気持ちを持ってパンを食べてほしい」
日本文理大学の長崎准教授は、給食の意義と安定供給の重要性を指摘します。
長崎准教授:
「お腹を満たすだけではなく、栄養教育や地域のことを知る教育的な役割は非常に大きい。給食を供給する仕組みは重要なインフラです。そこの維持ということについては、行政も積極的に関与していく必要はある」
子どもたちにとって学校給食は、適切な栄養を摂取し、食事について理解を深めながら学校生活を豊かにする場でもあります。パン給食をめぐる問題が浮き彫りになる中、継続に向けた対策が急務となっています。
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