2024年8月8日、南海トラフ地震臨時情報が初めて発表され、夏休みの観光に影響を与えました。そうした中、事前にできる限りの防災対策を取っていたことで、いつもと変わらず観光客を迎え入れることができた地区がありました。

「南海トラフ地震の臨時情報が発表されました。ご遊泳の際は、できるだけ沖まで行かず、波打ち際でのご遊泳をお願い致します」

8月14日の静岡県伊豆市土肥地区の海水浴場。南海トラフ地震臨時情報が発表されているさなかにも多くの海水浴客が訪れていました。

<千葉からの観光客>
「遠くから来る身としては、対策してくれているのはありがたいことで、また来たいなと思う要素になるかなと思う」

観光客が安心して訪れた理由のひとつが浜辺のすぐ近くに「テラッセオレンジトイ」という施設があることです。2024年7月にオープンし、1階には地元で穫れた新鮮な野菜などが並ぶほか、カフェでは伊豆の食材を使ったジュースなどが楽しめます。

<千葉からの観光客>
「地元のものもあったので、海だけじゃなくて見れるところがたくさんあって良かった」
「これとか」
Q. 何ですか?
「(伊豆産の)しいたけ。魅力の1つかなと思う」

<地元の人>
「もう5、6回来ている。ここは地元の人間の集いの場みたいになって、すごく楽しませてもらっている」

地元の人も集うこの施設は、ただの「観光施設」ではありません。階段を上ると津波の「避難施設」になっています。

<土肥温泉旅館協同組合 野毛貴登理事長>
「この上が18.8メートルの高さのエリアになるので、最大津波が10メートルというふうに想定されているから、ここにいれば、完全に津波からは身を守られるというふうに思う」

観光施設と一体化した津波避難施設は、全国で初めてです。

伊豆市土肥地区では、南海トラフ巨大地震が発生した際、最短6分で最大10メートルの大津波が襲うと想定されています。

14メートルの高さがある3階以上のスペースは、災害時、約1200人が避難できます。初めて来た観光客でも迷うことがないよう広い階段が複数あるほか、避難した後のマニュアルも用意しています。

8月、臨時情報が発表された際には、静岡県内でも、閉鎖した海水浴場がありました。観光客が大きく減った地区もある一方、土肥地区の「テラッセオレンジトイ」では、お盆の書き入れ時への影響は最小限で済み、前の週よりも客の数が増えたといいます。

土肥地区では、災害時に旅館やホテルが客室を避難所として提供する協定を市と結んでいるほか、避難訓練を繰り返すなど、防災対策に力を入れてきました。

<土肥温泉旅館協同組合 野毛貴登理事長>
「この地区は観光と防災を両輪で進めていく。これはきのう、きょうでできる話ではなくて、どのようにこの土地を強靭化していくかということを長い間年月をかけてやってきた成果がいま、ここで問われているんじゃないか」

伊豆市では、地元の人はもちろん、旅行客の命を守るため、観光のリーフレットに津波避難タワーや避難ビル、避難所を目立つように記載しています。

今後は、観光客に意識してもらうための取り組みが重要だと考えています。

<伊豆市危機管理課 山田和彦課長>
「旅行を計画する際に、行かれる観光地のハザードマップとか避難場所とかそういった場所を事前にチェックする、そして旅行にでかけるという意識付けが今後、必要になってくるかなというふうに思う」

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