様々な理由で親と暮らせない子どもは全国でおよそ4万人を超えるとされています。国は特定の大人と愛着関係を築く「里親制度」を推進していますが、その委託率で日本は外国に大きく後れを取っています。なぜ里親制度は広がらないのか?不妊治療をきっかけに里子を迎えた家族から、現状の一端を学びます。

「これば1回混ぜて」「これ?」「これ全部?」
台所で一緒に料理をする親子。
長崎県に住む小学5年生の女の子と母の千賀子さんです。

Qお手伝いはよくする?
母・千賀子さん:
「はい。家にいるときはね。サッカーで忙しくて」
女の子:
「もともとお兄ちゃんがサッカーをしていたので」
Q、V・ファーレンの試合も見に行く?
「家族で見にいったり、(兄と)2人で見にいったり」

阿部さんはおよそ8年前、当時2歳だった女の子の里親になりました。

「里親制度」とは、親の病気や離婚などで家庭で生活できない子どもを迎え入れて養育する制度です。原則子どもが18歳になるまでで、法的な親子関係はありません。そして里親となるのに、特別な資格は必要ありません。

「いただきます」
阿部家には現在、実子の高一長男(15)、里子として迎えた女の子(10)、里子として迎えた男の子(3)の3人の子どもがいます。

阿部さんが里親について考え始めたのは30歳の頃。2人目の子どもがなかなか授からない…、その悩みの中にいた時でした。

阿部千賀子さん(49):
「元々子供が大好きっていうのもあったんですけど不妊治療を長くして、でもちょっと諦めないといけないなっていうときに、たまたま里親制度のことを知って」

出会いは乳児院 辛かった「8カ月間」とは

女の子とは長崎県内の乳児院で出会いました。

Q初めて会った時のことは覚えていますか?
母・千賀子さん:
「すごく可愛かったですよ、やっぱりちょっとね人見知りはあったんですけど、見た瞬間に『かわいい!』と思いました」

しかし、そこから面会を続けた8か月間が、阿部さんにとってとても辛い時間だったといいます。

母・千賀子さん:
「1週間に1回・1時間だけの面会とかなので、やっと慣れた頃に離れてまた次来るときにはまた慣れるところから始まるって感じで…。『今日も駄目だった』と言いながら主人と帰っていました」

それでもほぼ毎週女の子の元に通った阿部さんは、一緒に外出するなど心を通わせる時間を少しず積み重ね、女の子の里親になりました。

「4万2千人の子供が親と暮らせていない」という現実

現在、様々な理由で親と暮らせない子どもは全国で《およそ4万2千人》いるとされています。国は特定の大人と愛着関係を持ち、自己肯定感を育むなどの理由から、施設での養護よりも里親などの家庭養護を推進する方針を2016年に示しました。

しかし里親等委託率は伸び悩み、単純な比較はできないもののアメリカやカナダが80%を超えているのに対し日本は23.5%に留まっていて、さらに長崎県は19%と全国平均も下回っています。委託率が低い要因は何なのか?

長崎県里親育成センターすくすく 川口岩継代表:
「一般的には施設が少ない地域においては、里親等委託率が高い。長崎県の場合は乳児院が1ヶ所、児童養護施設が11ヶ所と充実しております。宗教的なカトリックとかそういったものをベースとした施設が多いというのも一つ言えるかと思います」

説明会に参加した夫婦「子供が欲しい…」

長崎県里親育成センターが里親委託率が低いもう一つの理由として挙げたのが、里親制度の認知度不足でした。

県では制度の理解を深め、2029年度までに委託率を43.2%に上げようと、県内各地で出前講座を行い里親への経済支援や、サポート体制などを紹介しています。

説明会に参加していた1組の夫婦に話を伺うことができました。

県内在住の夫婦:
「子どもがずっと欲しかったんですけどできなくて、自分と血が繋がってなくても一緒に暮らしてみたいなというのがやっぱりずっとあって。職員の方に聞いたら土日とか夏休みとかに(短期間)預かる制度もあるということなので、そういう体験を積み重ねることで勇気を持って踏み出せるのかなと思いました」

伝える?生みの親の話

もともと里親として女の子を受け入れた阿部さんですが、その後特別養子縁組を行い、今は法的にも親子となりました。阿部さんは、女の子に産みの母親がいることも伝えています。

母・千賀子さん:
「『会いたいと思ったら言ってね』という話をしてるんですけど『まだ今はいいかな』と本人も言っていて。でもやっぱり『会いたい』、『やっぱり自分のルーツを知りたい』、そういう時期が来ると思うので、その時はお母さんと会う環境は作ってあげたい」

Q(女の子に)お父さんお母さんのことはどう思ってますか?
「お母さんはいつも料理が美味しくて優しいし、パパも一緒にサッカーに付き合ってくれて優しいです」

母・千賀子さん:
「本当幸せです。子どもたちと過ごすだけで。」

里親として子どもを迎え入れても、その後上手く行かないケースもある里親制度。ミスマッチを減らすためにも、まずは制度の認知度を上げ、希望する大人と子供を結ぶ環境を広げることは欠かせない要素です。

阿部さんは自分たちの家族をひとつのケースとして知ってもらうことで「里親制度」が社会に浸透し、一人でも多くの子どもがそれぞれの幸せを見つけることができることにつながればと話しています。

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